SS <because> 9
3月3日になりました。
未沙さんお誕生日おめでとう!
3日に3日の話をUPしたかったのに、話の中ではまだ2日の夜です。
28日にUPできなかったのがクヤシイ~!!
その日は私が女子会で酒盛りでした。
今日の話も女子会です。
会話が多いからか、長いです。
のんびり楽しんでいただけるとうれしいです♪
* 戴いたコメントにお返事させていただきました。(3/3)
未沙さんお誕生日おめでとう!
3日に3日の話をUPしたかったのに、話の中ではまだ2日の夜です。
28日にUPできなかったのがクヤシイ~!!
その日は私が女子会で酒盛りでした。
今日の話も女子会です。
会話が多いからか、長いです。
のんびり楽しんでいただけるとうれしいです♪
* 戴いたコメントにお返事させていただきました。(3/3)
<9>
予約してあった店はビストロ風で、ちゃんと個室をおさえていた。
カーテン一枚、パーティションだけでない店の奥にあるしっかりとした部屋で、
心置きなく込み入った話をするにはもってこいの場所だった。
ワインで乾杯し、それを合図につぎつぎと料理は運ばれてきて、そのたびに歓声が上がる。
頭数もいるからとボトルで頼んだワインもいいペースで底が見え、注文した本数は増え続ける。
いつもよりペースが早い。
クローディアは未沙の隣でなんとなく気づく。
元々が強いのか、自らコントロールできるのか、その両方か、
未沙が酒席で失敗したことをあまり見たことがないのだが、
今日はいつもとなにかが違う。
「早瀬さん、またケンカしてるみたいですよ」
ここに着く前にヴァネッサからこっそりと耳打ちされたが、
それはもう日常茶飯事だから差し引いてみてもやっぱり違う。
クローディアはさりげなく酒量を落とした。
「そうそう、松浦少佐ってどんなかたですか?」
キムが身を乗り出して未沙に訊ねる。
「一言でいうと、つかみどころがないかんじね」
くいっ、と軽快にグラスを飲み干しながら未沙は応える。
「かっこいいじゃないですか」
「好みじゃないわ」
「早瀬少佐にはいちじょ、いったーい!」
シャミーの余計な発言を遮るようにキムは足を踏み、話を戻す。
「アポロが長かったのに、あのころの噂って聞かないんですよ」
「私はその前のことしか知らないから。いい印象はないの」
「そんなひととずっと一緒なんですね。かわいそう」
「かわいそうも何もないわよ。仕事だから。
すごくできることは間違いないの。
だけどちょっと薄気味悪いっていうか・・・
今頃その辺で見張ってんじゃないかしら?
私達、最近監視されてるみたいで、息が詰まっちゃう」
「諜報系強いですしね」
「キムより?」
「私は非公式、あちらは公式ですから」
「そうそう!キムはゴシップ中心」
はじけるように笑い声が起こる。
「なにかあったの?」
クローディアが優しく問う。
「先週、うちに入る一条君の写真が撮られて、それがネットで出回り始めてたって。
松浦少佐が止めてくれたらしいんだけど」
「いいヒトじゃないの」
「それだけ聞けばねぇ・・・」
「あんまり気持ちのいい話じゃないですね。宿舎は軍の敷地内ですもの」
ヴァネッサもため息をつく。
「早瀬少佐ぁ、いいじゃないですか!
悪いことしてないんだから、堂々としてればいいんですよーっ」
シャミーが身を乗り出してテーブルをバンバンたたく。
キムがうるさいっ、と手を止めると、涙目になって未沙を見る。
「そんなことに負けないで、純愛貫いてください。
一条大尉が腰引けてるなら、私が殴りますからっ」
「・・・おだやかじゃないけど、ありがとうシャミー。
うれしいわ」
クローディアとヴァネッサは顔を見合わせる。
・・・やっぱりおかしい。
立ち上がって抱き合う未沙とシャミーを避けるようにキムが声を潜めて訊ねる。
「少佐、どれくらい飲んでます?」
「もうおぼえてられないくらいよ」
クローディアが頬杖をつきながら応えた。
あっというまにシャミーがつぶれた。
トイレに立ったっきり戻ってこないので、キムが様子を見に行った。
涼しい顔をして飲み続ける未沙にヴァネッサが話を振る。
「そういえば明日お誕生日でしょう?」
「よく覚えてるわねぇ。まぁ、わかりやすい日だから」
機嫌よく未沙は笑う。
「私の生まれたところでは女の子のお祭りの日なのよ」
「あなたらしいわよ」
「そうかしら?なんか負けてる気がするわ、女の子って言葉に」
「じゃ、明日は一条君とお祝いなの?」
とたんに顔色が変わる。
「しないわよ」
「なんで? またなにかあったの?」
「ないわよ。
でも私の都合に彼を巻き込んでいく感じがして嫌なの」
「彼は気にしてないと思うわよ」
「そうかしら。
いちいち上官に呼び出されて、あんな写真突き付けられても?
私と一緒にいたら、自由なんてないのよ」
「私も一条大尉はそんな風に感じてないと思いますよ」
未沙は半分くらい残っていたグラスを一気に開ける。
「早瀬さんがシャミーと管制代わってから入った子たちが、
一条大尉にきゃあきゃあ騒いでいるのを聞きますね。
もともとミンメイとも噂があったり、
彼自身も注目を集めるなにかがあるんですよ」
「彼氏モテてよかったじゃない。
まわりのことなんてもう、ほっときなさいな」
「でも私が嫌なの。これ以上彼に嫌な思いをさせたくないの」
「じゃあ、どうするの?別れるの?」
すねるように口をとがらせて未沙は黙りこくった。
「いやなんでしょう?素直になりなさいよ」
「・・・もう、どうしたらいいかわかんない。情けないわ」
「あなた、今、いろいろ抱え込みすぎなのよ。
仕事も大変なんでしょう?」
ふぅ、とため息をついて、未沙は口を開く。
「わかってはいたけど、想像以上に責任が重かったわ。
一般市民を乗せて、終点もわからない旅に出るのよ。
資料をめくるたびに重さが増していく感じがする」
たしかにね、とヴァネッサもうなずく。
「見落とされたからアポロは残った。
マクロスはミンメイのおかげで残った。
なにが幸いするかわからないから、
少しでも人類が生き残る道をつけておきたいってことなのよね、この計画は」
クローディアも言う。
「マクロスのときよりもゼントラーディからの情報と技術があるからいいのかもしれないけど、
やっぱり不安よ。
グローバル総司令がよく胃をおさえていた、あの気持ちがわかってきたわ」
「未沙もおとなになっちゃったわね」
重くなり続ける話の流れを変えようと、クローディアが茶化し、ヴァネッサが乗った。
「でも初めて会った時よりも、ずーっとかわいい顔するときがありますよ」
「あー!わかるぅ!!
ね、それってホントにオトナになったからじゃなあい?」
「もう、やめてよっ、私で遊ばないで。
それよりシャミーは大丈夫なの?
お手洗い行くついでに見てくるわ」
未沙は立ち上がる。
クローディアもヴァネッサもひやひやしながら見るが、足取りもしっかりしていた。
「・・・鋼の肝臓」
クローディアはつぶやく。
「ちょっと安心しました」
「なにが?」
「早瀬さんも人の子なんだな、って。
今までが完璧すぎたもの」
「一条君のおかげね」
「そういえばクローディアさん、坊や、って呼ばなくなりましたね」
「彼もたくましくなっちゃったからねえ・・・」
クローディアはくすっ、と笑った。
「シャミー、もうだめだから、キムが連れて帰ってくれるって」
戻った未沙が二人の荷物をまとめて出ていく。
「あんなに飲んでもしゃっきりしてるわよ。
人の世話まで焼いて、タダモノじゃないわ、未沙は」
「ザルじゃなくて枠ですね、完全に」
ヴァネッサも笑った。
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予約してあった店はビストロ風で、ちゃんと個室をおさえていた。
カーテン一枚、パーティションだけでない店の奥にあるしっかりとした部屋で、
心置きなく込み入った話をするにはもってこいの場所だった。
ワインで乾杯し、それを合図につぎつぎと料理は運ばれてきて、そのたびに歓声が上がる。
頭数もいるからとボトルで頼んだワインもいいペースで底が見え、注文した本数は増え続ける。
いつもよりペースが早い。
クローディアは未沙の隣でなんとなく気づく。
元々が強いのか、自らコントロールできるのか、その両方か、
未沙が酒席で失敗したことをあまり見たことがないのだが、
今日はいつもとなにかが違う。
「早瀬さん、またケンカしてるみたいですよ」
ここに着く前にヴァネッサからこっそりと耳打ちされたが、
それはもう日常茶飯事だから差し引いてみてもやっぱり違う。
クローディアはさりげなく酒量を落とした。
「そうそう、松浦少佐ってどんなかたですか?」
キムが身を乗り出して未沙に訊ねる。
「一言でいうと、つかみどころがないかんじね」
くいっ、と軽快にグラスを飲み干しながら未沙は応える。
「かっこいいじゃないですか」
「好みじゃないわ」
「早瀬少佐にはいちじょ、いったーい!」
シャミーの余計な発言を遮るようにキムは足を踏み、話を戻す。
「アポロが長かったのに、あのころの噂って聞かないんですよ」
「私はその前のことしか知らないから。いい印象はないの」
「そんなひととずっと一緒なんですね。かわいそう」
「かわいそうも何もないわよ。仕事だから。
すごくできることは間違いないの。
だけどちょっと薄気味悪いっていうか・・・
今頃その辺で見張ってんじゃないかしら?
私達、最近監視されてるみたいで、息が詰まっちゃう」
「諜報系強いですしね」
「キムより?」
「私は非公式、あちらは公式ですから」
「そうそう!キムはゴシップ中心」
はじけるように笑い声が起こる。
「なにかあったの?」
クローディアが優しく問う。
「先週、うちに入る一条君の写真が撮られて、それがネットで出回り始めてたって。
松浦少佐が止めてくれたらしいんだけど」
「いいヒトじゃないの」
「それだけ聞けばねぇ・・・」
「あんまり気持ちのいい話じゃないですね。宿舎は軍の敷地内ですもの」
ヴァネッサもため息をつく。
「早瀬少佐ぁ、いいじゃないですか!
悪いことしてないんだから、堂々としてればいいんですよーっ」
シャミーが身を乗り出してテーブルをバンバンたたく。
キムがうるさいっ、と手を止めると、涙目になって未沙を見る。
「そんなことに負けないで、純愛貫いてください。
一条大尉が腰引けてるなら、私が殴りますからっ」
「・・・おだやかじゃないけど、ありがとうシャミー。
うれしいわ」
クローディアとヴァネッサは顔を見合わせる。
・・・やっぱりおかしい。
立ち上がって抱き合う未沙とシャミーを避けるようにキムが声を潜めて訊ねる。
「少佐、どれくらい飲んでます?」
「もうおぼえてられないくらいよ」
クローディアが頬杖をつきながら応えた。
あっというまにシャミーがつぶれた。
トイレに立ったっきり戻ってこないので、キムが様子を見に行った。
涼しい顔をして飲み続ける未沙にヴァネッサが話を振る。
「そういえば明日お誕生日でしょう?」
「よく覚えてるわねぇ。まぁ、わかりやすい日だから」
機嫌よく未沙は笑う。
「私の生まれたところでは女の子のお祭りの日なのよ」
「あなたらしいわよ」
「そうかしら?なんか負けてる気がするわ、女の子って言葉に」
「じゃ、明日は一条君とお祝いなの?」
とたんに顔色が変わる。
「しないわよ」
「なんで? またなにかあったの?」
「ないわよ。
でも私の都合に彼を巻き込んでいく感じがして嫌なの」
「彼は気にしてないと思うわよ」
「そうかしら。
いちいち上官に呼び出されて、あんな写真突き付けられても?
私と一緒にいたら、自由なんてないのよ」
「私も一条大尉はそんな風に感じてないと思いますよ」
未沙は半分くらい残っていたグラスを一気に開ける。
「早瀬さんがシャミーと管制代わってから入った子たちが、
一条大尉にきゃあきゃあ騒いでいるのを聞きますね。
もともとミンメイとも噂があったり、
彼自身も注目を集めるなにかがあるんですよ」
「彼氏モテてよかったじゃない。
まわりのことなんてもう、ほっときなさいな」
「でも私が嫌なの。これ以上彼に嫌な思いをさせたくないの」
「じゃあ、どうするの?別れるの?」
すねるように口をとがらせて未沙は黙りこくった。
「いやなんでしょう?素直になりなさいよ」
「・・・もう、どうしたらいいかわかんない。情けないわ」
「あなた、今、いろいろ抱え込みすぎなのよ。
仕事も大変なんでしょう?」
ふぅ、とため息をついて、未沙は口を開く。
「わかってはいたけど、想像以上に責任が重かったわ。
一般市民を乗せて、終点もわからない旅に出るのよ。
資料をめくるたびに重さが増していく感じがする」
たしかにね、とヴァネッサもうなずく。
「見落とされたからアポロは残った。
マクロスはミンメイのおかげで残った。
なにが幸いするかわからないから、
少しでも人類が生き残る道をつけておきたいってことなのよね、この計画は」
クローディアも言う。
「マクロスのときよりもゼントラーディからの情報と技術があるからいいのかもしれないけど、
やっぱり不安よ。
グローバル総司令がよく胃をおさえていた、あの気持ちがわかってきたわ」
「未沙もおとなになっちゃったわね」
重くなり続ける話の流れを変えようと、クローディアが茶化し、ヴァネッサが乗った。
「でも初めて会った時よりも、ずーっとかわいい顔するときがありますよ」
「あー!わかるぅ!!
ね、それってホントにオトナになったからじゃなあい?」
「もう、やめてよっ、私で遊ばないで。
それよりシャミーは大丈夫なの?
お手洗い行くついでに見てくるわ」
未沙は立ち上がる。
クローディアもヴァネッサもひやひやしながら見るが、足取りもしっかりしていた。
「・・・鋼の肝臓」
クローディアはつぶやく。
「ちょっと安心しました」
「なにが?」
「早瀬さんも人の子なんだな、って。
今までが完璧すぎたもの」
「一条君のおかげね」
「そういえばクローディアさん、坊や、って呼ばなくなりましたね」
「彼もたくましくなっちゃったからねえ・・・」
クローディアはくすっ、と笑った。
「シャミー、もうだめだから、キムが連れて帰ってくれるって」
戻った未沙が二人の荷物をまとめて出ていく。
「あんなに飲んでもしゃっきりしてるわよ。
人の世話まで焼いて、タダモノじゃないわ、未沙は」
「ザルじゃなくて枠ですね、完全に」
ヴァネッサも笑った。
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