SS <love and hate> 3


続けて更新できた~(*´▽`*)
長いですが、お時間あるときにどうぞ♪

楽しんでいただけれると、うれしいです。



* 戴いたコメントにお返事しました。 (2/5)(2/8)




  <3>






「そろそろつくわよ」
マネージャーはそっとミンメイを揺らした。
「私、寝ちゃったのね?」
バックからそっと手鏡を出して、身なりを整えた。
車は速度をおとし、駐車スペースに落ち着くと、エンジンは切られた。



ホアン・ダグラス。
ミンメイの歌に魅かれて、ボドル基幹艦隊から戦線離脱し、降伏後にマイクローン化。
偶然、ドラムにさわることができ、見様見真似で叩きはじめる。
日を追うにつれ仕事を忘れるほど熱中してしまい、
居住区からは、騒音と家賃滞納で追い出されてしまった。
ドラムがなければマイクローンでいる意味はないと巨人に戻り、
労働条件のいい、今の工場での仕事に就いた。

そのマイクローン時代、彼の演奏の技術に気付いた輩が動画を撮り、
サイトに投稿していた。
社長がそれを見つけたのは、ホアンが巨人に戻ってしばらく経ってからで、
ドラムが忘れられず、何かを叩いては、うるさいと怒鳴られるばかりで、
この想いをどうしたらいいのか、頭を抱えていたときのことだ。

社長は、通常のサイズの6倍の大きさのドラムを調達し、
ホアンの勤め先のそばにある貸倉庫に置き、
改装して、簡単な造りだが練習スタジオに仕立てた。
巨人のままのミュージシャンがいてもいいじゃないか。
力仕事と戦闘員以外の、職業があってもいいじゃないか。
彼の構想には、商業的な成功を前提に、
新しい“なにか”をやってみたいという欲が根底に流れている。
ミンメイが歌い、活路が開けた瞬間を、
己の目で見ることができた数少ない民間人である彼は、
歌が、文化が、カイフンとは違う方向で、“世界”を変えられると信じている。

社長は、ミンメイ達の演奏を聞かせるからと工場側に交渉し、
ホアンの勤務に便宜を図ってもらう。
他の工員たちが、何事が起こっているのかと様子を覗うなか、彼は貸倉庫に向かう。
そこにはオリジナルサイズの彼と目線を合わせられるように設置された、
マイクローン用のギャラリーがあり、ミンメイ達が待っていた。
ホアンは少し緊張しているようで、ミンメイが微笑むと、目を白黒させていた。

自己紹介がひととおり終わったところで、曲についての打ち合わせが始まる。
ホアンは楽譜が読めないが、聞きこむことで覚える。
しかもミンメイの曲はすべて完璧にコピーしていたので、話の通りは早かった。



力強い音が、響き渡る。
「今の自分に、ちょうどいいサイズです」
クリスマスの朝、プレゼントをあけた子供のような顔で、ドラムの前のホアンは言った。
「今すぐには無理だけど、使い勝手の悪いところも調整できるから、あとで教えて」
社長が拡声器越しに応えると、彼はうなずいた。
そして慣れた手つきで、スティックを回す。
リズムが生まれた。



ゼントラーディ人のなかでも体格がいいホアンが叩く音はかなりの音量で、
傍にいると地鳴りのようだった。
ミンメイをはじめとする通常のサイズの人間と共に演奏をするには、
当然、音量の調整が必要不可欠で、準備はしてあったのだが、
彼の力強いプレイは予想を超えていた。
再調整のために、ホアンはドラムを離れる。
消えてなくならないか、確認をするように後ろを振り返りつつも、満足そうに微笑みながら。


腰を下ろして水分補給をしている彼のもとに、ミンメイも座った。
「すっごくよかった!」
彼に届くように、心もち大き目な声でミンメイは言った。
ホアンは照れたように、頭を掻く。
「ねえ、あなたはどうしてドラムをやろうって思ったの?」
彼はミンメイを穏やかな目で見つめる。
「・・・あの戦いの最中、流れてきた歌に驚いた。
今まで感じたことのない気持ちになった」
ミンメイも、じっと彼を見上げる。
「その音がなんなのか、とても知りたくなった。
心の中がうきたつような、こんな気持ちにさせるものが何なのかを」
彼は言葉を切った。ミンメイは黙って待つ。
「周りのヤツラは、ミンメイちゃんがカワイイ、って言ってたけど、俺は違った。
心臓のようにずっと鳴り続いている、あの音が欲しいって、わかったんだ」
ミンメイは吹き出した。
「私、ドラムに負けたのね」
「ああ。ミンメイちゃんじゃ、ドキドキしなかった」
邪気のない、ストレートな気持ちが、ミンメイに心地よく届いた。
霧が晴れるように、迷いが消えていく。
「ホアン、これからよろしくね」
立ち上がったミンメイが、ホアンに手を伸ばす。
「よろしく」
ホアンもその手に、指先でそっと触れた。



準備が整い、ふたたびホアンが呼ばれた。
彼は、となりにいるミンメイを気遣いながら静かに立ち上がると、ドラムセットに向かう。
彼の後姿から発せられている、音楽を取り戻した歓びは、
周りのメンバーやスタッフたちにも伝わる。
ミンメイは隣に立ったマネージャーに告げた。
「私達、『文化』を伝えられたのね」
マネージャーは静かにうなずいた。
ふたりは顔を見合わせる。
「今日はすごく気持ちよく歌えそうな予感がするわ」
ミンメイの顔つきが、明るく輝いていく。



その後、数回のセッションを経て、ホアンはミンメイのいる事務所と契約を交わした。



いままでの持ち歌のほかに、ミンメイが自ら作った曲が数曲加わる。
そして他のアーティストの作品も、カバー曲で追加する。
机上で弄ばれていたライブの構想が、
現実として立ち上がっていく様相を見せ、動き出した。

彼らの演奏は、ほぼすべてが社長により録画されていた。
その中で一番勢いがあった一曲を、彼は松浦に送る。
思惑通り、松浦は三日とおかずに、月から『飛んで』くることになった。




その夜。
片道一時間半かけたホアンとの練習の後、
マクロスシティでのテレビのバラエティ番組の収録を終えると、
もう日付が変わるような時間になっていた。
さすがに疲れ果て、マネージャーの運転する車の後部座席に沈み込むように座り、
メールをチェックすると、頬が緩んだ。
おつかれさま、と声をかけ、マンションのエントランスで車を降りると、
いつもの廊下を、いつもと違う部屋に向かって歩いて、インターフォンを押す。
応答はなく、開錠された音が聞こえるや否や、彼女は扉を開けた。

「来たか」
松浦は軍服だった。
見慣れない彼の姿に、ミンメイの胸は小さく音を立てたが、気づかれないように微笑む。
「お世話になります、副艦長さん」
一瞬で彼は真顔になる。
「でも、神話とか伝説とかは嫌よ」
「名案だと思ったんだが、お前のほかに、反対するヤツがいたんだわ、それ」
「レイって案外、安っぽいこと考えるのね」
「わかりやすくていいだろ?」
いままでにないくらい、優しい瞳で松浦はミンメイを見つめる。
「・・・凄いことやってくれたな。
社長の話を初めて聞いたとき、なに寝言こいてんだって思ったが、まさか本気だったとはな」
「やるときはやるのよ、私たち」
「まったくだ」
再び彼は真顔に戻り、暗い影を瞳に宿す。
「ゼントラーディ人は、お前の両親を殺した。それでも・・・」
「レイ。
それを言い出したら、なんにも始まらないわ」
ミンメイは切なくなる。
両親も、親戚も、友達も、生まれ育った街も、なくなってしまった哀しみがわきたつ。
「正直、どうしたらいいのか、私だってわからない。
だけど、ゼントラーディの人たちの中にも、音楽が好きで、
ホントに、なにもかも忘れちゃうくらい大好きだって人がいたの。
ただそれだけよ」
松浦の瞳を、ミンメイは真正面からとらえる。
「文化を伝える。
メガロードは、そういう艦なんでしょ?」
彼はうなずく。表情は徐々に明るくなっていく。
「じゃあ、私が乗らなきゃ」
ミンメイは、本物の笑顔を浮かべた。









*ホアン・ダグラスについて
FlashBack2012収録「天使の絵の具」(さよならサマーコンサート)での
ドラマーのゼントラーディ人をモデルに、創作しました。

ゼントラーディ人が地球人の6倍サイズというのは、らんこさんから教えていただきました。
ありがとうございま~す!






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No title

> ゆばさん

2と3は、一度にUPしたかったのだけど、
さすがに長すぎてぶった切ったのですよ~(笑)
よろこんでいただけて、私もうれしい♪

巨人のドラマーもコーラス嬢もいたあのライブ、
体の大きさが違えば、聞こえ方も違うし、
音響関係はどうなっているのかを考えると、
実現はとても難しいと思うのだけど、
そこはちょっと目をつぶって、織り込みました。

そろそろメガロードも発進となるはずなので、
もうひとふんばり、がんばりまーす(^O^)/


No title

> VF-4さん

すぐにわかっていただけてうれしいでーす♪
ドラムの大きさについては、私も実感がわかなくて、
冬コミでお会いした際に、らんこさんに教えて戴いたのですよ。
体のサイズは、地球人のほぼ6倍とのことなのですが、
ドラムなんて、普通のサイズでも騒音問題になりそうな音量なのに、
どんだけデカい音が出るのでしょうね(笑)
砂漠の真ん中じゃないと叩けないだろうな~。

マクロスのほかの作品は見ていないのでよくわからないのですが、
マックス、ミリアの娘さんの一人が
巨人の大きさのまま、歌っていられるようだし、
音楽を知ったゼントラーディの人々のバンドができるのも、
そんなに時間はかからないだろうなあ、と思います。
・・・楽器があれば、ですが。

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

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ご活用ください♪

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