SS <love and hate> 5

三月も後半になりました。
年度変わりでお忙しいかたもいらっしゃいますよねー!
今年は私も仲間入り(涙)
頭が疲れると、チョコレートとか、甘いものが欲しくなりますが、
心が疲れると、現実から切り離されるものが欲しくなる私は、
今日最終回の某ドラマにすっかりはまりこんでいました(笑)
金曜に最終回を迎えたドラマも~!
イっくんのお目目と、タッちゃんの前髪が好きだった!
・・・さて、来週から何見よう?


終わる終わるといって、まだ最終回ではないですが、
楽しんでいただければうれしいです。





*戴いたコメントにお返事しました。(3/22)











    <5>







輝は、同じシャトルでマクロスシティに降り立ったものの、
任務のため別々に行動していた松浦と落ちあい、
会見会場のホテルに設けられた楽屋代わりの部屋に通された。
入れ替わり立ち代わりスタッフが出入りし、
それぞれが自分のまかされた仕事を懸命にこなしている。
淡い色の、シンプルなデザインであるからこそ仕立ての良さがわかるうえに、
彼女の持っている華やかさが引き立つワンピースを着たミンメイは、
ソファに軽く腰掛けて、台本とおぼしき書類に目を走らせていたが、
輝に気がつくと、弾かれたように立ち上がった。
「来てくれたのね!」
自信にあふれた笑顔がまぶしく、すこし口ごもってしまう。
「これからもよろしくね、輝」
そこには、あの冬の日の面影も、オーディションの時の激情もない。
「・・・ほんとに乗るんだ?」
「もちろんよ。
私もあなたや未沙さん達の、お手伝いができたらうれしいわ」
よく動く、表情豊かな瞳で、ミンメイは輝を見つめる。
「あのね、私、可愛いだけじゃなかったの」
ミンメイは可笑しそうに首をすくめる。
言葉と真逆なその仕草は、
他の女の子がやったら冗談にもならないが、驚くほど様になっていた。
「どういうこと?」
「私の歌を聴いて、自分も音楽をやりたい、って思ったゼントラーディの人がいたの。
私じゃ、ドキドキしなかったんですって」
「は?」
「だから、私じゃなくって、音楽にときめいてくれたのよ。
ねえ、それって『文化』を伝えたってことよね」
ミンメイの言っていることを理解しようと懸命に頭を巡らせるが、
きらきらと輝くような笑顔を見ているうち、勢いに押され、うなずいてしまった。
そして彼女は、壁にもたれる松浦に目を向けると、甘く微笑み、
彼は他人行儀に軽く頭を下げて応えたが、その目は穏やかだった。
「うまく、行ったの?」
いままでと違う二人の雰囲気を読み取った輝は、声を潜めて訊く。
ミンメイは言葉にせずに、微笑んで俯いた。

マネージャーは出番が近づいていることを告げる。
軽快に返事をして、じゃあね、とミンメイは歩き出す。
ドアノブに手をかけ、振り向いた。
「未沙さんに伝えて。
お借りしているハンカチは、メガロードでお返しします。
いろいろありがとう、って」
頷いた輝に、手を振り、ミンメイは扉を閉めた。

松浦は手近にあった椅子に腰かけ、どこかに連絡を取っている。
輝は、二人の様子を見、穏やかな心持ちになった。
彼女が、自分に向かって伸ばした手を取ることができなかった。
あの時から胸の底に潜んでいた罪悪感によく似た、ほろ苦い気持ちが薄らいでいく。
これからも、恋ではない、友情よりも情の濃い、説明もできない、
はっきりと名前の付けられない感情を抱え、互いの幸運を祈りながら、
未沙とともに自分の道を走っていくのだろう。
それも悪くないと思えた。


     ☆ 


ひな壇の記者会見用のバックボードの前で、ミンメイは微笑む。
ストロボは花火のように焚かれるが、臆することなく彼女は目線をカメラに送る。
輝はスーツ姿で、会見会場の入り口に松浦と並び立っていた。
「ミンメイ、やっぱりすごいですね」
「さすが、と言ったところだな」
ふたりは目を細めて、壇上の彼女を見つめる。
司会者が会見を始める旨を伝えると、光の瞬きは治まった。
「このたび、私は、長距離移民船団メガロード01に拠点を構え、
宇宙からみなさんに新しい歌を届けることになりました。
地球から離れることになりますが、
変わらずに活動を続けていきますので、応援をお願いします」
ミンメイは堂々とカメラに語りかける。
「そして、旅立つ前にみなさんに会いに行きます。
世界5か所を回るワールドツアーを開催し、
最終日のマクロスシティの大コンサートホールの公演は、全世界に生中継でお届けします」
「準備のほどは」
「現在順調に進んでいますので、ご安心ください」
ミンメイは笑顔を向ける。
「また、統合宇宙軍のご厚意で、メガロード01の出発を一か月遅らせて戴きました。
ご協力、本当にありがとうございました」

「感謝してるのは、こっちなんだけどな」
「おかげで、なんとか間に合うようになりましたからね」
視線は壇上から外さず、ふたりは声を潜める。

ミンメイは、記者たちの質問に巧く応え、穏やかな空気のまま進んでいた。

輝は松浦につつかれる。
「行くぞ」
細く扉を開け、会場を後にする。
背後からは、輝との関係を問いただす記者の声が聞こえた。
昔からの、おともだちです。
ミンメイの『定番』の返答が聞こえた気がして、輝は小さく笑いながら歩く。


街はオレンジ色に包まれていた。
「暑いな」
松浦が目を細めて空を見上げると、こめかみに浮いた汗が流れ落ちる。
「秋が来る前に、飛び立つんですね」
輝もなにかを探すように、茜に染まる空の向こうを眺める。
夏をここで過ごせることが、うれしい。
「あいつが話、受けなきゃ、あと3週間だったな」
「もしミンメイが断ったら、どうなっていたんでしょうねえ?」
「うわー、他人事だね。
あんたらが一番嫌がる方法しか残ってなかったよ。
若く優秀で美人な艦長、そしてその夫が護るメガロードで、あなたも新天地へ!」
「そ、そんなやり方!!」
「つか、今回、ミンメイもすんなり乗るって言ったし、あんた出番なくなっちゃったね。
いっそのこと、これからその宣伝も打ってみるか?」
まだ間に合う、と松浦が茶化し、輝はふて腐れていく。
しかし、彼は声の調子を落とした。
「ほかのゼントラーディ軍に出会う確率も高くて、移住先も明確に決まっていない、
そんな旅に喜んで参加するほど、民衆はバカじゃねえ。
綺麗なイメージが抱けなきゃ、夢は見られない。
こっちがミンメイを担ぎ出したい理由はいくつもあるけど、
あっちにとっても、いいこと尽くしだ。
このまま地球にいたって、
今までとたいして変わらない活動になるのは、目に見えてんだよ。
だけどメガロードに乗れば、目新しい話題に事欠かない。
むこうさんも商売だし、軍ってのは、俺みたいに小細工する人間も必要なの。
綺麗事だけじゃ、どうにもならないことがある。
あんたも早瀬さんも、最前線潜り抜けてきたけど、こういう分野、苦手だろ?
でなきゃ、この人手不足の中、同期同格が同じ艦に乗るかよ。
あ、いま、俺、追い抜かれてたがな。
・・・でも、それだけこのプロジェクトは難しい」
「メガロードに乗せようと思って、ミンメイに近づいたってのは」
「ほんとだよ。どっちかっていうと社長の手引き、と言った方が正しいな」
顔色の変わった輝に、松浦は言葉を選びながら続ける。
「まさか、ここまで深入りするとは思わなかった」
軽く鼻で嗤い、松浦は歩を速める。
「ほんとにそれだけですか!」
思いがけず語気が強まった。
松浦は足を止める。
輝も立ち止まった。
「同じ場所にいられるっていうのは、うれしい」
輝に背を向けたまま、それだけ言うと、足早に歩き出した。

「おい!いつまでもぼさっとしてるんじゃねーよ」
先に歩き出した松浦に促され、輝は、弾かれたように後を追う。


      ☆


「前から噂の軍のかたがメガロードに配属されたから、ミンメイさんもそちらに?」
メガロードのブリッジのメインパネルに映し出された、
生中継の記者会見を見ながら未沙は唇を軽く噛む。
急な会見ではあったが、マスコミ各社と連携し、
質問内容はコントロールされていたはずなのに、
スタンドプレーを良しとする輩が飛び出してくる。
オペレーターたちは、ちらほらと未沙を盗み見るが、未沙は表情を変えない。
画面のミンメイは、楽しそうにくすくすと笑う。
「どなたを指してるかはわかりませんけど、
何人かのお友達は乗艦が決まっています。
おかげでメガロードでも楽しい時間を過ごせそうです」
スマートに話をまとめたミンメイは、次の質問に耳を傾けた。

あしらいの鮮やかさに、未沙は拍手を送りたくなった。
そのあともクルクルと大きな瞳を動かし、
時には小首を傾げて考え込んだり、持って生まれたかわいらしさが彼女を彩り、
キラキラした残像を残すように会見は終わった。
メインパネルには取り残されたバックボードだけが映り、
すぐにメガロード艦内の各所がモニターされた。
「悔しいけど、可愛いわよね」
航空管制のうちのひとりがため息をつきながら言うと、それを皮切りに各所で声が上がる。
「なんか前より、感じよくなったと思わない?」
「えー、あたし、やだな。計算っぽくて」
「でもあの歌は良かったじゃない」
「愛おぼえていますか、ね。それは認める」
女性ばかりの部署故か、辛口の批評も飛び交い始めた。
舞台に立ち、注目を集め続けねばならないミンメイの境遇に対して、
少しだけ同情していた未沙は、艦長、と声をかけられ、我に返る。
「艦長はミンメイと面識があるんですよね?」
「ええ、まあ」
「たくさんのお友達のうちのひとりだとか?」
瞬間、うなずくことができなかった。
小さく笑い、曖昧にごまかしてしまう。
うん、と言ってしまえば、質問は重なっていくだろう。
彼女との因縁は深く、そして人々の興味を煽るものだから、
未沙は気を引き締める。
「そろそろ始めましょう。
バーキン少尉、シュミレーションX-38から始めて」
了解、と応え、彼女は端末を操作し、指示を出し始め、
ブリッジに気持ちがいい緊張が走る。
未沙は手順を丁寧に確認するように、実地訓練を再開させた。








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非公開コメント

No title

> ゆばさん

お気遣いありがとうございまっす!
ゆばさんこそお疲れ様でした~っ。

その部分に気付いていただけて、うれし~い(#^^#)
ミンメイにしかできないことだよね~(笑)
そして、彼女は一般人の尺度では測れないと、
書きながら再確認した回でした。

メガロードに乗るのなら、
未練とかスキャンダルとか全部吹っ切って、
カッコよく進んでほしい。
FB2012の「天使の絵の具」につながるように。

そして男子達(笑)も楽しんでいただけて、よかったぁ♪


次回はもうちょっと早めに更新したいです。
がんばるぞーーー\(^o^)/
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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