SS <遺跡>

文化の日ですね。
そして明日は輝の誕生日、おめでとーっ♪
2015年11月、子守りがんばれよ~!!
という状況であってほしいなぁ。

さて、劇場版の遺跡でのひとときです。
そんなかんじかな~?という想像を巡らせて書きました。

楽しんでいただければ、うれしいです。


*戴いたコメントにお返事しました。(11/5)







< 遺 跡 >






傾いた陽が、影を長く、長く伸ばす。
海から浮上した建物はいくつもの水たまりを残し、
そのうえを吹き抜ける風は強い潮の匂いを運ぶ。
まどろんでいた輝は、ゆっくりと目を開ける。
傍らには白い肌を見せた未沙が横たわり、先刻までのことが夢でなかったことを教えた。
寝ぼけた未沙が彼の首に腕を回す。
輝が抱きとめると、彼女はおどろいて目を覚まし、どちらともなく、穏やかに微笑みあった。
言葉はいらない。
ふたりのあいだに、昨日までと違う時間が流れ出していた。

「ほんとに初めてだったんだ!」輝が声をあげた。
未沙は脱ぎ捨てた自らの服を引き寄せ、胸元を隠して、上半身を起こした。
輝は話し出す。

出くわしちゃうんだ。
誰もいないはずの空き部屋とか。
人気のない通路の行き止まりとかさ。
そういうこと、してるところに。
普段は「あのひとが」って思うような清楚な女性士官、あ、名前は言わないでおく。
あとで複雑な気分になるから、知らない方がいい。
最初はびっくりしたけど、今じゃ、見ないふりもできるようになった。

未沙は少しけげんそうに彼の横顔を見るが、気にも留めず、輝は続けた。

俺の親父がアクロバットチームを持っていて、先輩もそこにいた。
チームは男ばっかり。
けど、だれかしらの恋人が、チームみんなの身の回りの世話をしてくれた。
そのヒトたちには、いっぱい遊んでもらった。
あまりに出入りが激しすぎて、顔も名前もそんなによく覚えていないんだけどね。
親父はみんなに、けじめを付けろ、と言い続けていたけど、
そんなの止められるわけない。
さすがに俺の目の前でどうこう、ってことはなかったけどさ。
でも、普段は一緒にいるからね。
チビの俺がいつもどおり彼女たちに寄ってくと、
コドモは寝る時間だ、って相手にされなくなるときがある。
諦めきれずにふたりが消えた部屋まで追っかけていくんだけど、チビでもわかるんだ。
そこには自分の入れない世界があるって。

「人間の本能ってヤツ?
だからしょうがないって、先輩は言ってたけどさ・・・」
輝の、感情を感じさせない『先輩』という言葉が、未沙には切なく響き、
すこしでもいいから、笑ってほしくなる。
「なんとなく、わかるわ。
私もあるわよ、その…、そういうことをしているところに、ばったり出会っちゃったり」
「そのまま説教でしょう?」輝はニヤニヤと笑う。
「ここをどこだと思っているの?それでも軍人ですか!」
「し、しないわよっ!」未沙は声を荒げる。
「嫌じゃない?知ってる人の…情事って」
「じ、情事!」輝は吹き出す。
未沙は軽く彼を睨むと、話を変えた。
「よくフォッカー少佐に言われたわ。肩ひじ張ってないで、ぶってみろ、とか。
そういうときに、きゃあ!とか言えれば可愛げもあるんだろうけど」
「言えないわけだ」未沙は深くうなずく。
「士官学校は首席でも、早瀬さんには超難問だね」
「もう!さっきから失礼よ!」未沙は声を尖らせる。
「それより、オペレーターと仲良くなるヤツ、多くない?」
「そういわれればねえ…。でもあなたたちって、民間の女の子の憧れじゃない?」
「だから、いつ出会うのさ?スクランブルばっかりじゃないか。
そんなわけで知ってる女の人は、管制と食堂のおばちゃん位かな?」
「そのオペレーターがおばちゃんだったから、あなた、いつも突っかかってきたのね」
未沙はくすくす笑う。
そんなことない、と、バツが悪くなった輝は、鼻の頭をポリポリと掻いてごまかした。
「かわいい子だったらよかったわねぇ」
さっきの仇とばかりに、未沙は茶化しながら畳みかけるが、
輝は無言で彼女に寄りかかった。
肌と肌がふれあい、未沙の心臓が跳ねあがる。
「話がそれた」未沙の動揺に気がつかない輝は、話を続ける。
「あなたもはじめてでよかった。うれしかった」
「どうして?」
繰り返される『はじめて』に、不快感を覚えた未沙は口調を強めた。
寄りかかる輝から身を離し、きつく見つめた。しかし、彼はやわらかく笑む。
「俺も初めてだったから。対等になれた気がした」
今度は未沙が目を丸くする。
「あなた、パイロットなのに…」
「そうじゃないヤツだっているんだよ」
すねる輝に、未沙は笑いかける。
「ここにいたら階級も年の差もないじゃない。あなたと私がいるだけ」
輝も小さく笑って、未沙を見つめる。
彼女は、ゆっくりと睫毛を伏せた。
ふたりのあいだの空気がかわり、
未沙の胸元に抱かれていたアンダーシャツは、ゆっくりと滑り落ちた。


まだ赤みが強い光がふたりを縁どる。
そして床にのびたふたつの影は、ひとつになった。










fin









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非公開コメント

No title

> ゆばさん

なんとか、無事間に合ったぁ~(^○^)

もったいないお言葉ありがとうございます。
ほんとに、このふたりにあわせるとこうなるの(笑)
もっと巧く伝えられるようがんばります!

そして未沙の件、ほんとにありがとう!!
ソッコーで直したよぉぉぉ(汗)
こういうことがあるから、気が抜けないね(大汗)

No title

> ぱよぷーさん

ふたりらしさがでているか、ものすごく心配なんですよ。
書いてるうちにわけわかんなくなってきたり、難産でした。

TVと映画は、同一人物のはずなのに微妙に違いがあって、
なかなか難しいね(-_-;)
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

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ご活用ください♪

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