SS <what do you say?> 4 (完)

やっと「fin」を打てました!
年内にUPできて、本当にうれしい~(^○^)




*戴いたコメントにお返事しました。(12/20)(12/26)



           <4>







白く、温もりのない空間。
ガラスケースは床に置かれ、扉は閉められた。
人の気配がしなくなり、ようやく緊張を緩めようとするが、
足が、手が、細かく震えて止まらない。
その姿を監視モニターでとらえられぬよう膝を抱え、ちいさくなる。

流石のマックスも、丸腰の状態で自分の行く末を話題にされたのは堪えた。
捕らえられたといっても、
メルトランディ側にしては初めての地球人だから、
簡単に生命の危機が訪れることはないと落ち着いて行動できたし、
なによりミリアの尋問が尋問らしからぬ様相を帯び、
知り合ったばかりなのに、
気の合いそうな予感のする仲間と話しているようで、恐怖心を抱くことはなかった。
また、この艦ではミリアの権力が絶対だと踏んでいたが、
控えていた情報参謀らしい将校の冷静さに、
少し浮き足だっていたことを気づかされる。
膝を抱えたまま大きく息を吐き出す。
自分では、大きな、大きなため息だったはずなのに、
この無機質な白い部屋では、まったく響くこともなく空気中に溶けた。


何度も浮かび上がるのは、鮮やかな緑の長い髪を持つ、美しい面影。
心の奥深く、いちばんやわらかい場所に彼女を留めた。



遠くで声がする。
響く靴音は近づいてきて、止まった。

何かが、始まる。
マックスは素早く意識を束ねた。
感傷は仕舞われ、戦う者の意識が彼を包み込む。
いつでも飛び出せるよう、両手を地面に添えて。


軽い音を立てて、扉が開く。
ミリアがひとりで入ってきた。
なにやら言っているが、マックスには意味がわからない。
様子に気づいたミリアは、マックスには見えないガラスケースの下部に触れ、
隣に腰を下ろした。
「どうして、ここに?」
マックスは声をかける。
ミリアは膝を抱えて、顔をうずめた。
「・・・わからない」
彼女が呼吸をするたびに、胸郭やわき腹が動く。
緑色に輝く長い髪が、音もなく彼女の体に沿って流れ落ちた。
外見は体の大きさ以外は自分と同じだが、
そのほかに生物として共通点があるのか、感情の動きも同じなのか、まったくわからない。
それでも彼女が今、悩んでいるのが伝わる。
敵である、自分の隣で。

マックスは自分もミリアに近い場所に座ると、彼女を見つめる。
彼女の動きとともに、髪は生きているようにうねる。
「綺麗だ」
緑の海原のような、髪の流れに見とれたマックスはちいさくつぶやいた。
ミリアは顔をあげた。
マックスは、自分が声に出したことに驚く。
しかも安っぽい口説き文句のようで、気まずさが彼の顔を赤く染める。
しかしミリアは目を細め、言葉の意味を探した。
「キ・・レ、イ?」
「うつくしい、ってことだよ」
答えを探す彼女に、丁寧に彼は伝えた。
ミリアは弾かれたように、マックスを見る。
「うつくしい?それは何だ?」
しおらしさは一転し、彼の知っている調子を取り戻す。
「なにが?」
マックスには彼女の言いたいことがわからない。
「おまえは私に二度もその言葉を使っている。
どんな意味があるんだ?」
毅然としたまなざしが戻り、まっすぐにマックスに向かってきた。
二度も。
彼女の言葉を反芻する。
腹の底からこみあげてくる可笑しさが、出口を求めてせり上がる。
こらえきれなくなったマックスは吹き出した。
笑いは止まらず、笑い転げる。
「なにが可笑しい!」
ミリアは床を叩く。
衝撃でマックスの体は、浮き上がった。
「あああ・・・、ご、ごめんっ」
平常に戻ろうと努力をするマックスを、ミリアは冷ややかに見つめる。
「君のことを馬鹿にしたつもりは、全くないんだ」
マックスはミリアを見上げ、肩で大きく息をし、調子を整える。
ミリアは不機嫌そうに眉を寄せ、彼を見下ろす。
「お前の軍でそういう態度は、無礼な行いと言わないのか!?」
「たしかに、そうだ。僕が悪い。
女性を笑い飛ばすなんて、礼儀も何もあったものじゃないね。もうしわけない」
マックスは軽く頭を下げる。
「で、どういう意味なんだ」
待ちきれず、さっさと言え、とばかりに、ミリアはマックスを促す。
伝えたい言葉は彼女に通じるのか、
どこまで噛み砕けばわかってもらえるのか、彼には予測がつかない。

「美しい、って、二回も、僕は言ったの?」
ミリアはうなずく。
マックスも気持ちを込めて、彼女を見つめる。
自分の想いが、彼女に届くように。
祈りに似た願いを込める。
「・・・ずっと見続けていたい、ってことだよ」
「では、見ていればいいではないか。なんの遠慮もいらん」
ふたりの視線はぶつかる。
男に媚びることを知らない、まっすぐなまなざしは快くマックスに届く。
彼女は知らない。
見つめあった後、つぎに芽生える気持ちを。
もちろんマックスも知らなかった。
まだ誰にも、そこまでの気持ちを抱いたことがなく、
自分のすべてをかけたい女性にめぐりあってはいなかった。
まして欲をごまかすため、
まにあわせの関係を持つことは、彼の信条に反した。

彼を眺めていたミリアが目を細めた。
彼女の瞳の中の自分も揺らいで歪んでいく。
「どうしたの?」
優しくかけられた声に応えるように、ミリアは大きく息を吐き出した。
「まただ」
マックスは首をかしげ、次の言葉を待つ。
「お前を見ていると、調子がくるう」
彼女は左胸に右手を当てた。
「美しい、というのが、ずっと見続けていたいということは、なんとなくわかった。
・・・私も、おまえを『美しい』と思う。
だが見つめていると、ここが苦しくなってくる」
マックスは耳を疑う。
「この苦しみは、メルトランである私だけなのか?」
切なそうに瞳を潤ませて、ミリアは続ける。
「お前にはないのか、マックス?」
恋も愛も、何もわからない彼女は初めての想いを、感じたまま堂々と告げる。
「僕もだよ、ミリア。苦しくてたまらない。
君のことを、好きになってしまったから」
彼自身もほんの前に自ら認めた彼女への想いを、まっすぐな言葉にのせた。
するとミリアは戸惑いながら、スキ、と口内でころがすように、小さく復唱した。
ミリアの告白に歓び勇み、過程を飛ばしてしまったことに気が付いたマックスは、
落ち着きを取り戻した。
「『美しい』と思ったから、見つめてしまう。
見つめていると、わけもなく切なくなってくる。
切なさを消すために、ふれあって心を通わせたくなる。
ミリア。
今、僕は君に触れたい。君を抱きしめたい。
君はどう?」
意味はともかく、言葉のニュアンスは伝わったらしい。
ミリアは頬を染める。
それは初めての感覚だったらしく、熱を帯びていく自らの頬に驚き、何度も掌で覆う。
「私が私でなくなっていく」
つぶやいたミリアは強く頭を振る。
緑の髪は大きく広がった。
そしてマックスを右手でつかみ、目の高さまで持ち上げた。
加減をしているらしいが、圧迫されて苦しくなる。
「マックス、全部お前のせいだ」
顔をゆがめるマックスを、ミリアはじっと見つめる。
そして左の掌を添え、右手の力を緩めた。
マックスは激しく咳き込み、肩で息をしながらミリアを見上げる。
そして彼は元いた場所に、丁寧に降ろされた。
「こんなにも弱弱しいのにな」
「同じ大きさなら、そんなこと言わせないよ」
マックスは吐き出すように言う。
「あ、それは可能だ。
おまえの体を私たちも調べたが、構造に大きな差異はなかったし、
お前の軍の発表でも、男どもがマイクローンになっていたではないか」
なんにしろこのままの体格差で、いつ握りつぶされるかわからない状態は好ましくない。
マックスは腕を組む。
「僕のバルキリーは?」
「修復不能だ。そのまま保管してあるはず」
目的は、生き延びること。
彼は腹を決めた。
「僕を君と同じ大きさにしてくれないか?」
ミリアは口角を綺麗にあげ、微笑んだ。
「いいだろう。この艦にも装置はある。
私はこの変な気持ちにおさまりをつけ、私に戻りたい。
それに、なによりもお前と決着をつけたいんだ。
このままではそれもままならぬ」
あまりのあっけなさに、マックスは拍子抜けをする。
「僕がここで、君の艦になにかすることは考えないのか?」
「私を倒せるのなら、好きなようにしろ。
それに我々と同じ大きさのまま、お前は自軍に戻ることは不可能だろう?」
ミリアはまっすぐマックスを見る。
「おまえにだったら、全部くれてやる」
澄んだ光をたたえた緑の瞳に、マックスが映った。






あたたかな風に全身が包まれる。
濡れた髪はなびき、水分が飛ばされていく。



風がやむと、一呼吸おいてガラスケースが開かれた。
マックスは自らの掌を握ったり開いたりを繰り返す。
見たところ、どこにも違和感はない。
それどころか、以前自分がいた世界に戻ったような気になった。

それはマックス自身の変化によるもの。
すぐ傍に用意されていた貫頭衣を身に着ける。

名を呼ばれた。
目の前に立った、彼の名を呼ぶ女性をマックスは見つめる。

「美しい」
「やっぱり、それか」
ミリアは微笑む。
「何度でも言うよ」
マックスは彼女に向かい、一歩踏み出した。








fin





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非公開コメント

No title

> ゆばさん

ふたりらしかったですかっ!?
うれしーーーーっ💛
マックスのスマートな素直さと、ミリアの潔さを描きたかったの。
ミリアがあっさりとゆるすのは、負ける気がないからだと私は思う(笑)
そんな勝気なミリアが好き~っ。
って、ここで告白してしまう(苦笑)

このあとはほら、みなさんご存知のとおりだし、
結婚式挙げるエピもあったというから、
きっとそうなんだよ、ってことで!
実力不足の私にはまだまだ書けませぬ~(#^.^#)

No title

> VF-4さん

私も30年経って「あれ?どうやってこのふたり・・・??」って
書き始めた話なんですよ。

戦闘中は輝はマックスに気づかなかったと思います。
マックスからデルタ1には直接報告が入って、
未沙が輝に教えてあげるといいのに。
すごく喜びそうだ!!

巨人化のままの出産は、
星間結婚第一号のミリアにはちょっと難しいのではと思います。
ものすごーく細かくデータ取られたんだろうな。
ちょっとかわいそうなんだけど、
出産は最後までどうなるかわからないから、
慎重なくらいでちょうどいいかも。

そのトランプ、私も持っていましたが、いまはもうありません(号泣)

コミケでお会いできなくても、
VF-4さんの分は確保しますので、ご安心を!

No title

> ぱよぷーさん

綺麗だと思ったからって、
ストレートに「美しい」って言える男の人はそういないよね。
いやみや気障にならないのは、マックスの人徳、
まさしく「純粋培養の精神的貴族の天才」だから!!
ぱよぷーさんてば、巧いこと言うなぁ~(*^^*)
私もそう思います!

こちらこそ読んでいただいてありがとうございました。
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

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ご活用ください♪

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