SS <to tomorrow>

2016年最初のSSです。
SS <遺跡>とあわせて読んでいただけるといいな、と書きました。

楽しんでいただけたら、うれしいです。




*戴いたコメント、拍手コメントにお返事しました。(1/24)(1/25)(1/31)










<to tomorrow>









未沙は急ぐ。
足が開かないタイトスカートを、つま先が細いパンプスを、
こんなに疎ましく思ったことはない。
靴音は耳障りなほどに響く。
すれ違う士官の中には眉をひそめるものもいたが、かまっている暇はない。
クローディアが作ってくれた時間は、ほんのわずか。
それを逃せば、次の機会はいつくるのかわからない。

格納庫にたどり着いた彼女は、赤いスカルマークをさがす。
人の流れに逆らい、かき分けながら。

スクリーン越しに顔を見ることはできた。無事も確認できた。
今は、それだけでは物足りない。
顔を見たら、飛び込んでしまうかもしれない。人目があってもかまわない。
彼は大仕事を終えたのだから。

目当ての尾翼はすぐ見つかった。
整備士が機体の損傷の確認作業をはじめている。

「何してるの?」
不意に声をかけられ、未沙は振り向く。
艦内服を着崩した輝が立っていた。
「その格好はなに?だらしがないわ」
飛び出したのは憎まれ口。
「だって暑いんだぜ」輝も、口を尖らせる。
整備士たちは笑っていいものか、悩みながら下を向く。

普段、輝は崩した格好はしない。
そのままシャワールームに向かうつもりだったのだろう。
可愛くない態度を取ってしまったと、未沙も少し俯いた。
輝は歩き出す。未沙もその後を追った。
出撃が遅く、燃料に余裕があった輝の帰還は最後に近く、
自室へ向かうパイロットたちとすれ違う。
未沙を見ても反応は鈍く、彼らが心身ともに疲れ切っていることがわかる。
女の未沙には場違いな場所で、
なによりも残された時間はあとわずかなのに、無言で並んで歩くだけ。
大きな意味を持った戦いの直後、ドラマティックな再会を予想してしまったが、
拍子抜けしてしまった。
それでも輝がいつもどおりに戻ってきた、それだけでいいと思った。

「じゃあ」未沙は声をかける。ブリッジへ続く、エレベーターはすぐそこだ。
輝は足を止め、彼女の手を握る。
無関心を装う人々が、通り過ぎる。
未沙も握り返す。
「コクピットにいると、ひとりなんだ」
輝は、まっすぐに未沙を見つめる。
「でも今日はずっと、君と一緒に戦っていた気がする」
未沙は微笑む。
しかし、小さくかぶりを振った。
未沙の脳裏に浮かんだのは、
眼前の戦いにひるむことなく、凛々しく、たおやかに歌い切った少女の後ろ姿。
思い当たったのか、輝も微笑む。
「ひとりぼっちじゃない、か。」
未沙は頷く。
エレベーターの表示が、点滅しながら近づいてくる。
未沙は手を離そうとしたが、逆に引き寄せられ、輝のアンダーシャツが頬にあたる。
濃い汗のにおいがした。
「ただいま」
未沙は彼の背に手を回した。
「おかえりなさい」
輝から額に、キスが落とされた。
そしてエレベーターの到着を知らせる音が鳴る。

扉が開く。
未沙は彼の顔を見上げた。いままでと違う雰囲気をたたえていて、瞳が離せない。

エレベーターは、扉を閉じる気配を見せた。
輝はもう一度強く未沙を抱きしめ、そっと腕を外す。
未沙は、エレベーターに乗り込んだ。
「ゆっくり休んで」彼に向け、小さく手を振る。
輝はうなずく。
「少佐も無理しないで」
扉は、ふたりを隔てた。

先に乗っていた数人の兵士は、きまり悪そうに未沙から視線を外す。
それでも恥ずかしいとか、やましい気持ちはまったく起こらなかった。
はじめて結ばれたあとの遺跡での会話を、頭の中で反芻する。
あのとき話題になっていた『清楚な女性士官』の立場に、
自分が立ってしまったらしい。
苦笑を浮かべながら、表示される数字を見つめる。


「ありがとう、クローディア」
骨を折ってくれた親友に声をかける。
クローディアは、すこし不安を乗せた瞳で振り返る。
「会えたの?」
「ええ」
未沙の表情を読み取った彼女は、深くうなずいた。

ふたりは定位置に戻る。
モニターは待っていたかのように彼女たちを任務に引き戻していった。






                   fin





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非公開コメント

No title

> ゆばさん

うれしいよ~っ、ありがとう!
今回は自分の中ではぶった切った感があったので、
どうなんだろうな、と不安だったの。

そして、UPしたときは「よし!」って思ったけど、
読み返すたびに、直したくなっていまーす(^_^;)

しかし、書いた私が言うのもなんだけど、
他人のラブシーン見せられた、
エレベーターのひとたちも気の毒だよね(笑)

No title

> VF-4さん

未沙はあのあとの始末が大変そうですよね~。
管制官は神経使う仕事なのに。
代わりの要員も大戦だから招集されてるだろうし、
休めないだろうな。
輝は当然、大仕事のあとで、
体力も気力も半端なく使っているから、
休息が仕事ですね。
そして輝の体力が回復するころ、未沙は疲れ果てて休む。
あれ?すれ違う日々(大汗)

No title

> 拍手コメント やまちんさん

地味な話で、大丈夫かと心配でした(汗)
やまちんさんにほっこりしていただけて、よかったぁ!

次の更新は時間かかりそうですが、
待っていてくださいね♪

No title

> VF-4さん

恋愛は、そのひとがいないとダメって状態になると、
確実につぶれますよね(笑)
大丈夫、未沙も輝もひとりでやっていける!!
と、私は思いますが。

ほんとに、VF-4さんご自分でお話書かれるといいですよ!
ラブラブなふたりを書いてくださいよ~っ!!
そして、その際は是非ご一報くださいね~(^o^)丿

No title

> ぱよぷーさん

短いながらも会えてうれしいふたりが伝わった~(#^^#)

こちらこそ、もったいないお言葉、ありがとうございました。
もっともっと、うまくなりたいっ!!
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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