SS <rain>

バレンタインネタじゃないけど、短いSS。

楽しんでいただけると、うれしいです。



*戴いたコメントにお返事しました。(2/14)









<rain>










はじまりはいつも些細なことだ。
つまんない言葉尻を捕らえて、こじれていく口げんか。
言葉のやり取りで、
頭の回転が俺よりもずっといい彼女に勝てるわけがなく、
ついつい言わなくてもいいことまで口に出してしまった。
弁解したくてもできない、どうにもしようがない、
やけっぱちが混ざり合った気分で立ち尽くす。
彼女はだまって飛び出していった。

放った言葉は胸の中で反響する。

未沙が二人の仲を先に進ませたがっていたのはわかっていた。
俺は『結婚』って言葉に気後れして、実感がわかない。
なにより、周りの言いなりになるようで、面白くない気持ちもあった。
気持ちが伴わないプロポーズなんて、する気はさらさらない。
そんなに軽いもんじゃない。

『今だって一緒にいるじゃないか。なんでそれじゃダメなの?』
何度か彼女に言った。
いつもは、ため息ついて、もう、いいわ、と切り上げるが、今回は違った。

俺はいまだに未沙の限界がつかめなくて、最後は怒らせて泣かす。
だから、クローディアさんに「坊や」扱いされている。
そんな俺が未沙の隣に立つ。
許されることなのか、自分でもよくわからない。

机の引き出しの一番奥にあるちいさい包みを取り出した。
ずいぶん前から用意はしていた。
布張りのふたをそっと開いて、
小さく華奢な『それ』に込められている意味を思い返す。
これ以上このままにしていたら、いいことはひとつもない。

雲が垂れ込めて、まったく星が見えない空だった。
灯がともり、街は夜の始まりに活気づき、人々は家路へ、街へと急ぐ。
マクロスは人々を見守るように、背後にそびえたっている。
年始めに大破した部分の修復も進んだが、完璧にとは言えない。
パトロールに出る数機のバルキリーが横切って行った。

ケータイは全然つながらない。
もちろん家にもいない。
なれば、と行きそうな店を片っ端から回るが、
そんなに大きな街ではないのに、影すら見つからない。
いつのまにか降り出した小雨は俺の全身を濡らし、前髪からしずくが落ちる。
振り払い、やみくもに街の中を走り回った。

すぐそこにいそうなのに、じれったい。
途方もない迷路にはまった気分。
立ち止まり、祈るような気持ちでリダイヤルするが、
何十回も聞いた無機質な声だけが流れる。
・・・もしかして呼び出された?
マクロスを振り返り、未沙がいつもいるあたりを眺める。
直接連絡を入れるも、無駄に終わった。

雨脚は容赦なく激しさを増した。
万策尽き、未沙の宿舎の玄関ドアにもたれかかり、ずるずると崩れ落ちる。
時計は11時をまわっていた。
ずぶ濡れで座り込む俺を、任務帰りの同僚は、気づかないふりをしたり、
怪訝そうに眺めたり、様々な反応で通り過ぎる。
・・・また迷惑かけちゃうな。
かぶりをふると、力を振り絞る。

立ち並ぶ家の灯りは、次第に消えていく。
暗闇が広がり、街灯だけが冷たく照らすなか、水音を立てて走り続ける。
明日ではきっと間に合わない。
今じゃなきゃ、言えない。

通りの向こうから歩いてくる、だれかの気配。
それが未沙であればと願い、先を急ぐ。














   fin



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非公開コメント

No title

> ゆばさん

水も滴る、いい男、いや、仔犬(笑)
バレンタインネタではなく、こんな方向に走ってしまったのですが、
美味しくいただいてもらってよかったぁ♪

No title

> やまちんさん

バレンタインだから、というわけで(^^ゞ←こじつける
<・・・yes>とつながってるってわかるからの甘さになりました。
楽しんでいただけて、うれしいです♪
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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