SS <what a wonderful world!> 3


楽しんでいただければ、ほんとにうれしいです!





*戴いたコメント、拍手コメントにお返事しました。(5/28)






<3>





ミリアは見るもの、聞くもの、触れるもの、なにもかもが新鮮なのだ、と未沙は思う。
先入観がない分、新しいものを見せてくれる。
既成概念にとらわれることは、よくない。
それがこの大戦から未沙が得た経験の一つ。
このふたりなら、信頼できる。
そう踏んだ瞬間、彼女の好奇心が鎌首をもたげた。
「いいじゃない!行ってみましょうよ!!」
と、高らかに声をあげ、ミリアに同調した。
「ちょ、ちょっと!ここがどういうところだかは、あんただって知ってるはずだろ?」
輝が慌てて声をかける。
「なによ。そういうことをするだけの場所なの?」
「ゲームとかカラオケもあるっていうし、いいんじゃないですか」
「マックスまで・・・おまえらはいいよ、夫婦なんだから」
「あら、四人で一部屋よ。いいじゃない」
「だから!あんなところついていって、何かされてもしょうがないんですよ。
いくら早瀬さんでも女なんだ!!」
彼が心配してくれているのはわかるが、
最後の一言が引っかかって、未沙は素直に喜べない。
「そういうコト考えてるの、あなただけよ、一条君。
この顔ぶれでどうこうなんてあるわけないでしょう?
私だって判断くらいできます」
ミリアが不思議そうに輝を見る。
「一条中尉はなんでそんなに焦っているのだ?
ここは夫婦じゃなければ入れないのか?」
「違う!そんなんじゃないっ!!」
髪でもかきむしりそうな勢いで、輝が食いつく。
「マックス!ミリアは任せた。話がこんがらがる」
マックスは軽く息をつき、輝の肩を宥めるように叩く。
「僕達にその気がないから、大丈夫です。
それよりこんな場所で大声上げているから目立っちゃってますよ」
その間にミリアと未沙は入り口をくぐった。
ほらほら、と、マックスに丸め込まれ、輝もあとに続く。


未沙は、常日頃から「クソマジメ」とクローディアに茶化され、
一矢報いたい気持ちがあった。
そしてブリッジの三人は悪意がないので、さほど気にならないが、
他の部署の女性士官達にもその辺を揶揄され、面白くなかった。
アラスカ基地から輝の膝に乗せられ、
フードが吹き飛んでいるから仕方ないとはいえ、しがみつく格好で帰還すると、
皆、涙ぐみ、拍手で迎えてくれたが、
次第に尾ひれ背びれがついて様々な憶測が泳ぎだした。
「男に免疫がないから」
「なんだかんだいっても、所詮はお嬢さん育ち。勘違いも甚だしい」
大きな哀しみも、いつ癒えるかわからない疲労も、噂に勢いをつける。
ついには未沙の耳にも入るようになる。
まったくいわれがないことであれば「馬鹿馬鹿しい」の一言で片づけることができるのだが、
あのとき未沙に芽生えた気持ちが、完全否定することを拒んだ。
輝が自分のことを親しい友達くらいにしか思っていないことは充分に理解しているし、
彼の想いがミンメイにとどかなかったことも直接聞いている。
好き、好き、と自分から迫っていくような、はしたない真似は死んでもしたくない。
ミンメイの身代わりにされるのもいやだ。
が、ぼさっと眺めているのも性に合わず、未沙の心はねじれていく。
素面なら直視すらしない『いかがわしい場所』に踏み込むほど、混乱している。


「すげぇな」
輝はぽかんと口を開けた。
建物の入り口をくぐってすぐのディスプレイには、
部屋を様々な角度から撮影された画像がスライドショーになっていた。
「僕も話しか聞いたことがなかったけど、こんなだとは」
マックスも感心する。
室内に大きなブランコ。馬が一頭だけのメリーゴーラウンドには、馬車までついている。
悪趣味に近い和室も、ロココ調の調度品がならぶ部屋も、強烈な光を放ち、
未沙は圧倒される。
ここは遊園地なのだろうかと、錯覚が起こる。
「ここにしてみよう!」
食い入るように見ていたミリアが指さした部屋のパネルを未沙が触れると、
自動販売機のドリンクのようにカードキーが滑り落ちてきた。
もう後戻りできない。

行きましょう、と未沙が振り返り、男二人を促した。
「早瀬さん、酔ってる?」輝が怪訝そうに問う。
「そんなに飲んでないわよ」余裕の笑みを浮かべ、未沙は先頭を歩いた。
喉はからからに乾いている。

扉を開けると、ほの暗い部屋が広がった。
童話のプリンセスの部屋を模しているのか、少女趣味の家具がならぶ。
ピンク色の、やわらかさを模した合皮のソファに猫足のテーブル。
壁には大画面のテレビ。
「軍の宿舎とはえらい違いですね」マックスが感嘆の声をあげる。
「まるで別世界だね。金払っても、来たくなるはずだ」輝もうなずく。
そして天蓋から紗のカーテンに包まれた丸い形の大きなベッドが、
部屋の奥に置かれていた。
「なんでここが良かったの?」マックスがミリアに尋ねる。
「こんな装置は初めてだ。じっくり見てみたいじゃないか。
それより、ここのバスルームは外から中が全部見えるぞ!!
お前は入浴するときは誰にも見せないようにするものだと言ってたのに、ここは違う。
何故だ?」
ミリアに手を引かれ、マックスはバスルームに連れていかれる。


ひと通り見て歩いた未沙がベッドの天蓋を開けた。
寝具もなにもかもメルヘン一色の雰囲気の中で、
天井に貼られた鏡とベッドサイドのティッシュボックスに生々しさを感じ、頬が熱くなる。
「だから言ったでしょう?ここは、そういうところなんだよ」
背後からの輝の小馬鹿にしたような言い方が、未沙の勝気に火をつけた。
「なによ。あなたは来たことがあるの?」
「あるよ」
瞬間、背中にすっと冷たいものが走った。
その正体は不快感なのか、裏切られた感じなのか、未沙にはわからない。
「レースで転戦していて、宿が取れなかったときにね」
輝はベッドに腰掛ける。
彼に気付かれないように、安堵の息をつく。
「疲れて眠るには、あったかくて柔らかいベッドがあればどこでもいい。ただ・・・」
輝が黙る。未沙も隣に腰を下ろした。
微かに聞こえる、女の声。
未沙は輝を見た。
「心霊現象じゃないよ」
輝も未沙を見つめる。
いつもと違う瞳。未沙は息を呑んだ。
「だからさ、男と来ちゃダメなの」

急に世界が動き、天井に映る自分が見えた。












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非公開コメント

No title

> ゆばさん

お酒のチカラもあるけれど、
腹が据わると未沙は大胆じゃないかなーっと切り込んでもらった!
なんたってダイダロスアタック考案者だもんなぁ、と、
こういうときにいつも思ってしまうよ(笑)

続き、なるべく早くUPするので、待っててね♪

No title

> ひーちゃんさん

マックス君はおうちあるから、
きっと使ったことがないかな~って(笑)

昔はいいイメージがない施設でしたが、
今は女子会プランとかありますよね!
時代が変った・・・びっくりした。
かと思えば、ネットカフェやカラオケボックスで、
そういうことしたりするツワモノもいるそうなので、
なんでもアリなのかなぁ、なんて思ってしまいます。

空白の二年間の行きつく先は二部なので、
ゆったりと楽しんでくださいね~♪


No title

> misarinさん

未沙とシンクロしちゃいましたか!
輝は輝なので、そんなところでした~(#^^#)

「レイニーナイト」迷走する回でしたね~。
作画もだけど、きちんと作ってもらえていたら名作だと思います。
もったいないっ!!!
もっとあんなふたりが見たかったなぁ。

No title

> やまちんさん

楽しんでいただけていますか♪
うれしいです~(*ノωノ)
恋愛の始まりのどきふわ感が出せたらいいなぁ、
といつも思いますが、
私が書くとケンカ三昧なので、困ってます(^_^;)

また遊びに来てくださいね♪

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

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ご活用ください♪

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