SS <a few days later>


前作の続きです。
これを本編に織り込みたかったけど、無理でした(´Д⊂ヽ


楽しんでいただけると、うれしいです。





*戴いたコメントにお返事しました。(8/14)














<a few days later>










机に向かい、日誌の入力を終えた輝は、大きく伸びをする。
座り仕事は向いていないと思うのは、こういう瞬間だ。
体が固まって、縮こまってしまう。
いつもの自分に戻すよう、ごきごきと音を立てて首を回しながらパソコンの電源を落とした。

体を動かしたわけでもないのに空腹を覚え、食堂に向かう。
すぐ食べたいときには、いつでも開いていて、
好きなだけ食べられる軍の食堂は、本当にありがたい。
『頭を使うとおなかがすくもの』
歩きながら、未沙に言われたことを思い出す。
それじゃあ普段、なんにも考えていないみたいじゃないか。
輝はひとり、憮然とした。
そして、いつもと違うことをすると倍疲れるんだ、と、
ここにいない未沙に言い返してみる。
大戦後、彼女とは艦内で顔を合わせると立ち話をしたり、
お茶を飲んだりする回数が増えた。
任務の延長のようなときもあるが、たいていはこんな風な、他愛のない話題だ。
「おつかれさま」のひとことが体にしみ込み、
緊張と興奮で無駄に入った力がすっと抜けていく。
気持ちもほぐれ、今日も何とか帰りついた、生き抜いた実感が沸きあがる。
そんな彼女の目の下にも隈がうっすらと浮かんでいたりして、
似たような状態であるのに、
声をかけてくれる、気にしてくれるということは、素直にうれしい。
スクランブルがかかる回数も目に見えて減り<
数日前などエースパイロットが三人、
チーフオペレーターまでも同時に非番を取れるくらいに、
状況は落ち着いてきた。
輝はもうじき、長い休暇に入ることになっている。

カロリーとボリュームのある料理をトレイに並べた。
世間話をする連れもなく、輝はひたすら食べることに集中している。
やがて空腹は満たされていき、人心地ついてきた。
落ち着いたせいか、なんとなく視線を感じて顔をあげた。
だが、周りは彼には無関心で、各々の時間を過ごしている。
気のせいか、と輝はフォークを持ち直すが、やはり誰かに見られている気がした。
「やだぁ」
「ちょっと、声が大きいわよ」
甲高い声がする方を向くと、
自分と同世代か、もう少し若い女の子たちが四人ほど顔を寄せ合っている。
最初に声をあげたらしい彼女は、ちらちらと輝のことを伺っていた。

ミンメイと閉鎖空間に二週間閉じ込められたことは艦内でも有名で、
彼女がデビューしたのち、マスコミに『恋人か?』と取り沙汰され、
そのたびに興味本位な視線を受けることがあったので、
経験上、よからぬ話をしている気配はわかった。
悔いを残さぬよう告白し、しかも自らの予想通り振られた身としては、
その関心と興味はヒリヒリと痛いものだ。
また、あの決戦時にアラスカから未沙を連れて帰還したことで、
そちらも面白半分な噂が流れていて、
輝としては、お前ら暇だな、としか言いようがないのだが、
はやし立てられる対象が上官の未沙なので、
彼女らが自分より下士官であったのなら、
少しガツンと言った方がいいのかもしれない、とチラチラと盗み見る態度から思った。

手と口は動かし続けたので、皿は空になった。
最後にコーヒーを飲み干す。
カップを降ろすと、例のグループにいたひとりが彼の前に立っていた。
階級は同じ。その顔に覚えがないので、管制官でないことだけは確かだ。
「バリアチームのライズです。一条中尉、お話、よろしいですか?」
返事を待たず、いいですか、と彼女は空いていた椅子に腰を掛ける。
彫りの深い、北欧系の顔立ちで、青い瞳のライズは、輝をぐっと見つめる。
その迫力にすこし身じろいだ。
「私達、一条中尉の味方です」
唐突に切り出された言葉が理解できなくて、輝は何と答えたらいいのかわからない。
「隠さなくてもいいです。
こんなところでおおっぴらにお話できることじゃありませんから。
でも、ずっとわかってました。
おふたりがひっそりと禁じられた愛をはぐくんでいたこと」
「なにを言ってるのか、さっぱりわからないんだけど」
おふたり?またミンメイのこと?
返事のしようがない輝の様子に、彼女はうんうん、と頷く。
「いいんですよ、ほんとに。
障害があるほど止められなくなるものですし、それを貫くのが真の愛ですから」
「だから、なんなんだよ!」
彼女は輝に顔を寄せ、ジーナス少尉、と囁く。
「マックスぅ!?」
すっとんきょうな声をあげた輝を制するように、ライズは人差し指を唇の前に立てた。
「ジーナス少尉がミリア・ファリーナと結婚したのは、作戦でしょう?」
「それは違う」
輝はきっぱりと応えるが、彼女は軽く首を振り、小声で早口に告げる。
「彼の意中の方は、一条中尉じゃないですか」
今、何を言われたのだろう?
意外すぎて、輝は言葉の意味を反芻する。
彼女はホテルの名前を囁いた。
思い当たる節がある輝は、動揺を表情に出す。
彼女は微笑む。
「大丈夫です。私達、そういう偏見はありません」
「・・・それも違う」
すさまじい誤解に、輝は腹が立ち始めた。
が、ライズはふっと目を伏せる。
「仲たがいされてますものね」
「いい加減にしろよ!
さっきから好き勝手なこと言い立てて、いったい何なんだよ」
声を荒げた輝に、彼女はそっと告げる。
「本当に隠さなくていいんですよ。
一条中尉がジーナス少尉を追いかけていく姿を見たものもいるんです。」
・・・あれだ。
輝は額に手を当てて俯く。

だから嫌だって言ったのに!
行きたいと言い出した未沙とミリアに、
いいじゃないですかとのどかに後押ししたマックスに、今すぐ言ってやりたい。
マクロスの艦内は、狭いんだ!!

「あんたが期待していることは、ひとつもないよ」
そっけなく言い捨てると、輝はトレイをもって席を立った。


食器を返却口に置き、出入り口に向かうと未沙の姿を見つけた。
彼女も輝に気が付き、笑顔で向かってくる。
壁と天井が透明カーボン製の窓際にふたりは席を取った。
様々な有害物質が漂っているだろう艦の外は、
そんな現実がまるで嘘のようにうららかな昼下がりの春の日差しに満ちていた。
「いい天気なのに、拗ねた顔しているのね。なにかあったの?」
紅茶を一口飲み、丁寧にカップをソーサーに戻した未沙が話を切りだした。

事情を聴いた未沙は、耐えきれず噴き出す。
「ったく、誰のせいだと思ってんだよ」
頬杖ついた輝は、未沙を睨む。
「ここまでくると、ひとつの才能じゃないの?」
目尻を拭きながら、未沙が言う。
「マックスは目立つし、モテるのもわかる。
だが、なんで俺が巻き込まれるのかがわかんない」
輝は口を尖らせる。
「そうねぇ・・・」未沙は小首をかしげた。
「なんだよ、結局、あんたも面白がってるだけじゃないか」
「だって、面白いんだもの。しょうがないじゃない?」
「他人事だね」
「あら、私だってあなたと噂になったわよ」
「俺なんかが相手で、すみませんね」
「まあ!拗ねてるの?マックスだけじゃないわ。あなただって十分に目立ってるわよ」
「そうかな?」
「でなきゃ、人の話題になんか上らないわ」
「狭いんだよ、この軍の中は」
「ダイダロスとプロメテウスがあるっていっても、所詮は戦艦一隻分。
街があるっていってもたかが知れてるし。
なにより、若い男性がそんなにいないものね」
ふたりは現実に引き戻される。
いまはここにいない仲間たちの面影が、よぎっていく。

「先輩が・・・」
先に口を開いたのは、輝だった。
「フォッカー少佐?」
未沙の問いに、輝はうなずく。
「先輩がいたなら、言うだろうな。
チャンス到来だ。今ならどんな女もお前のものだぞ、って」
そうね、と、未沙も小さく笑う。
「現実はそんなんじゃないけど」
自分で言いだしたにもかかわらず、輝の胸は痛んだ。
「どんなことにも、例外はあるものよ」
淡々と未沙は応える。

壊れた恋は、まだ生々しく輝の中でくすぶっている。
戦闘中はそれどころではないから構わないが、
バルキリーを降りて聞こえる彼女の歌声も、
カイフンと並ぶ姿も、彼にとっては刃と同じで、
強く、深く、突き刺さり、痛みで崩れそうになる。
そんなとき、未沙は程よいタイミングで弱音を吐かせてくれる。
だから、こんな風に会いたくなるのだな、と輝は気づく。
彼女もカイフンに恋心を抱いていたから、
同じ痛みを抱えた者同士、ぐんと身近に思える。

「早瀬さんも」
呼ばれた未沙は、輝の瞳を捉える。
やわらかい日差しは、彼女を鮮やかに縁取った。
綺麗な人だと、あらためて彼は感じた。
「早くイイヒト見つかるといいね」
彼女は表情を変えた。哀しい色がまなざしに浮かぶ。
何か悪いことを言ってしまったのだろうかと、輝が焦るくらいにはっきりと。
しかし未沙は、うっすらと笑みを浮かべる。
「ええ」
先ほどの様子がまるで嘘のように、未沙は明るい声でうなずいた。
輝は安心する。
「今日はこれからなんだろ?」
「そうよ、あなたと入れ違い」
未沙はカップの紅茶を飲み上げた。
「さ、お仕事です」
そういって立ち上がると、じゃあ、と軽く頭を下げる。
「いってらっしゃい」
輝は後姿を見送った。

手元には冷め切ったコーヒーがカップに半分残っている。
何の気なしに二回、クルクルと回して一気に飲み干した。
そして、自室に向かうべく席を立った。






fin




back



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

> mimosaさん

コメント、&ご連絡、ありがとうございます。

マックスは「ふーん、面白いね」
って余裕でかわしそうですよね~(笑)
「お前、なんでそんなに普通なの?」
「真実はひとつですよ、先輩」って
余計騒ぎになったりして~(≧◇≦)
その後ミリアの魅力を照れもせず、あますことなく語りだし、
「ビバ!ミリア!!」で締めくくるの、熱望です。

そして輝と未沙は、無自覚で共依存が始まってると思います。
・・・先は長いです。その後二年ですもの―(´Д⊂ヽ

新しいこと、はじめられるんですか!?
私は某スポーツクラブ(といってもいいのだろうか)に行きたいと
言い続けて二年が経ちました。
そろそろ本気で行きたいです!

暑さに負けず、がんばりましょうね!

No title

> VF-4さん

「うん・もう」と思う前の段階かな、と思って書きました♪
輝はまだ振られたてのほやほやなので
「都合よく乗り換えられるのも、ちょっとね、でも・・・」
っていう感じをだせたらと思いまーす。

No title

> ゆばさん

どんな時代でも、女の子はおしゃべりスズメ~
ってことで、まさかのマクヒカ疑惑(笑)
ホテルに入った時も出たときも、
輝はマックスのあとを追いかけているから、
どっち見られてもね( *´艸`)
女の子たちも、特にマックスは結婚しちゃったし、
自分のものにならぬのなら、
いっそ手の届かぬ世界の人になってほしいという
願望もあったりするかもな、なんて考えてみました~♪

未沙はホントに気の毒なんだけど、
こういうところでガツンとでないまま二年間過ごして
タイミングを逃しまくった二年間の果てが「ロマネスク」
・・・かわいそうだ、やっぱり(/_;)
でも、そういう不器用さが、好き💛

No title

> ゆばさん(2回目)

うぉぉぉぉーっ!刺激が・・・刺激がぁぁぁっ!!

これは大正解でしょう☆☆☆☆☆
充分理解できてる!ばっちりです!!
そして、抵抗しながら、ってところが、彼らしいよ♪

うん、暑いけど通常営業だよね~。
これくらい刺激がないと、ばてちゃうよね~!
活力、ありがとうございましたヽ(^o^)丿

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム