SS <on the planet>

更新の間隔があくSSになります。
続きがいつ、と言うのが本当に明言できません(大汗)

なにもかもはっきりとさせていない話ですが、
いろいろ想像を巡らせていただきながら、
楽しんでいただければ、うれしいです。



*戴いたコメントにお返事しました(10/1)















<on the planet>









鳥に気をつけろと、父が言った。
「宇宙に浮かぶ小さい浮遊物みたいなもの?」
姉が尋ねた。
「生き物は、そんな簡単じゃない」
父は顔を引き締める。
「父さんがそこまで言うなら」
「全部教えたはずなんだけど、なにか忘れている気がする。
俺の当たり前とお前の当然は、ものすごく似ているようで実は違うから」
ふたりはうなずきあう。
父娘ではなく、同志に向ける表情で。
僕は観客のように眺めているだけだった。


父と姉は、バルキリーパイロット。
姉の入隊に、両親は真っ向から反対した。
物心つくころから、バルキリー隊の控室で育った姉に、
バルキリーの魅力をあますところなく教えた父が頭ごなしに拒むところを、
興味深く僕は眺めていた。
何週間も水掛け論のようなやり取りを繰り返した末に親たちが根負けをして、
姉は意志を貫いた。
幾度ともなく両親はこの話でため息をつく。
「誰に似たんだか」
「こういうところは、私かもしれない」
そうは言いつつも、ふたりの表情はどこか誇らしげだった。


母も軍にいたが退役して、
今は失われてしまった人々の生活様式を聞き取り、
現在しか知らない僕たちの世代に伝えようとしている。
文化を伝えたい、それが母の信念になっている。
そしてこの家では僕だけが軍とは無縁で、
私立の工業系のスクールに在籍している。
基礎課程の修了を待たずに今を迎えているが、
専攻を定めることができずに足を止めている。





二人乗りのバルキリーは高度を下げた。
白い靄の中を降下していく。
未知の世界に踏み込むにはもってこいの始まり方だ、
と圧力を全身に受けながら思った。
視界が一気に開けた。
地表に広がる世界が、はっきりと見える。
画像は網膜に結ばれているが、理解できるほと頭が働かない。

翼を広げ、音もなく飛ぶそれが鳥だと気付くのに、しばらくかかった。
伸びやかに風に乗って、空を舞う。
「あれが鳥なのね」
姉の、すこしだけ緊張した声が響く。
見とれていた僕は、返事を忘れる。
「おい!聞こえてる?」
「あ、ごめん、大丈夫だよ」
僕の意識があることがわかり、安心したのか、姉は着陸態勢を取る。

空は青く、海は碧く、大地には緑が揺れる。

映像でしか見たことのない世界。
幼いころ、眠る前にベッドで聞いた、父と母が生まれ育った星。

操縦に集中せねばならない姉には申し訳ないが、
僕はすべてを見渡したくて、精一杯努力してみる。
しかし身動きが取れず、
姉のヘルメットと、そのわきから迫りくる地面くらいしか覚えがない。



緑色にうねる草原と、滑走路しかない場所に降り立つと、
航空機を離発着させる管制塔らしい建物が背後にあった。
「空気のある中を飛ぶのは初めてだけど、すごくわくわくしちゃった」
ヘルメットを外し、肩まで伸びた黒い天パの髪を振ると、姉は言った。
僕はふらつく足元をまっすぐ保つのが精一杯で、
鍛え上げられた姉との違いをまざまざと見せつけられる。
かなりの屈辱だが、必須の体育くらいしか運動をしていないので、致し方ない。
「ねえ、凄いね。
農園地区に似ているけど、あそこよりももっと濃いにおいがしない?」
僕もなんとかヘルメットを取った。
「あんた、ほんとに体力ないわね。なっさけなーい」
反応のない僕に容赦ない言葉を浴びせてくるが、反撃する余力はない。
何も言えずに周りを見渡す。

「ようこそ、東京へ」
落ち着いた女性の声だった。
姉は姿勢を整えて敬礼する。
声の持ち主は、すっと敬礼を返し、手を下ろした。
そんな習慣がない僕は、母に教わった会釈をする。
彼女は優しく微笑んだ。
僕らの両親よりも十歳以上、いや、もっと齢を重ねているように見える。
気持ちよく背筋が伸びている、褐色の肌の背の高い女性で、ここの所長だと名乗った。

管制塔のある施設に向かい、僕らは歩き出す。
かつて世界有数の大都市だったこの場所は、どこよりも被害が大きく、
それでもようやく緑が芽吹くところまで回復したのだと、所長は言う。
「あなたたちのお母さんのふるさとよ」
ところどころに草は生えているが、濃い色をした乾いた地面が広がり、
空には白く盛り上がった雲がゆっくりと流れている。
そこからは母が血道をあげて調べ上げている『人々の暮らし』など、
気配も感じることができない。
いぶかしげに目線を泳がし、首をかしげると、
彼女は、仕草がお父さんにそっくり、と、小さく笑った。
自分の知らないところで、両親を知るひとというのは、
なにか弱みを握られているようで居心地が悪く、僕は斜め上を睨みつける。
「見た目は母似なんですけど、
落ち着きがないって言うか、そういうところが父とそっくりなんですよ」
姉が言う。
「あなたはお父さんに顔つきが似ているけど、声が未沙によく似ているわ」
彼女は目を細めて、僕らを見る。
僕らのなかに、両親を探している。
大きなブラウンの瞳がうるんで、ゆらいだ。
僕らは一瞬顔を見合わせたが、
それ以上言葉をつなげることができずに、口をつぐむ。
初対面の僕らより、
親交の深かった両親がそろって顔を出す方が、彼女は嬉しいに決まっている。
若干の居心地の悪さをおぼえた。
彼女は笑顔を作る。
「ごめんなさい。
ほんとに懐かしくって、うれしくってね。
こんなおばあちゃんにじろじろ見られて、気分悪いわね」
「そんなことないです」
姉は応える。
「母の親友だったとお聞きしています」
「あら、それは違うわ」
彼女はきっぱりと言い切る。僕は眉を寄せる。
「今でも親友よ。私にはね。
だから、本当にうれしいのよ。
抱っこさせてもらったちいさなちいさな赤ちゃんが、
こんなに綺麗なお嬢さんになって、
あのときはまだ生まれていなかった弟君も連れて、
バルキリー飛ばしてきてくれたんだから」
きゅっと口角があがると、表情がかわいらしくなる。僕の緊張もほぐれる。
そして饒舌だった姉は、褒め言葉に一瞬頬を赤らめた。
「さて、と。
フォールドを繰り返したことだし、これからあなたたちの健康診断をさせてもらうわね。
そのあとはお部屋を用意してあるから、今日はゆっくり休んで。
地球はちょっと勝手が違うから、すこし疲れるかもしれないけど、
二、三日で慣れると思う。
今晩のお食事はお部屋で取れるようにしてあるし、ここの案内は明日にしましょう」
彼女は僕らを促し、三人並んで歩く。

建物に入る自動ドアの前で、振り返る。
乗ってきたバルキリーは、整備士たちに取り囲まれていた。
ここにある機体とは明らかに違うのでものめずらしいのか、
必要以上の人数がいるように思えた。

そして空を見上げる。
天井もない、星もない世界。
初めて来た場所なのに、のびやかな気持ちになれる。
でも、鳥はどこにも見えない。

自動ドアが再び開き、姉が顔を出した。
名を呼ばれ、返事をすると後を追った。







fin



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No title

> とんぴさん

はじめまして~♪
コメントありがとうございます。

きれいなお話とお褒め戴きまして、とてもうれしいです。
なんだかんだとケンカしながらも助け合って、
こどもたちを育てているといいな、と思います。
この先、私が意図している場所に着地させられるのかが
大変不安なのですが、じっくり取り組んでいきますね。



No title

> ゆばさん

絵が描けたら、説明不要でわかることなのに、
字だけだとくどくど長くなってしまうので、
こんなになってしまったよ。

女の子は父親に、男の子は母親に似るって言わない?
だから、ちょっとやってみた!←おいっ!!
遺伝だと、くせ毛が優勢だったような気がするから、
弟も輝みたいにモワモワしてる・・・かもしれない(笑)
自分でも時々、ふと親に似てると思う瞬間があるんだけど、
そういうかんじで、彼も父の面影を残していてほしいな~、と♪

未来が生まれたことは確実なんだけど、その次はどうなったのか、
その辺は「行方不明」にされているので、
自由にさせてもらってまーす(笑)
って、いつも自由だな、私は(^^ゞ

No title

> mimosaさん

巡らせて楽しんでいただいているようで、うれしいでーす♪
たとえはるか遠く離れ離れになっても つながりあう想い
(うふふ、歌の歌詞なのー💛)
というのは、男女間だけじゃないですよね。
そんなふたりであってほしいです。

No title

> VF-4さん

未沙も輝も働いてるし、
艦長室に幼児がウロウロというのは問題だろうし、
バルキリー隊のマスコットではないけれど、
赤ん坊が育っていく過程を、
ライブでゼントラさんや、地球の若者に見せる絶好のチャンス、
とこじつけて
輝の子守り率が高かったんじゃないかなー、
っていう想像故のパイロットです。
新鮮に感じて戴いて、よかったぁ♪

バードストライクのあとは焼き鳥、唐揚げっていいですね~。
厄落としみたいだ。

地球でどんな風に過ごすのか、おそーくなりますが、
書いていきますので、待っててくださいね!

No title

> まみぃさん

懐かしさ、うれしいです!!
クローディアにとって、
未沙との日々は青春真っただ中(死語)。
フォッカーと並んで、
若くて勢いがあった季節の象徴だと思うのですよ。
面影を宿したふたりを見て、
こみあげる想いがありますよね。
そういうのが書きたかったですが、
まだまだ未熟な私の技術(-_-)
続きは気長に待っていただけると、うれしいです。

No title

> ぱよぷーさん

ありがとうございます!
そのお言葉、励みになりますー♪

ほんとに表現力が伴わないので、
焦らずゆっくり書いていきたいのだけど、
描き切れるかが問題よ(^^ゞ
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

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ご活用ください♪

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