SS <remember>

週末が来ると嬉しくてたまらない!

さて、先回の記事で、文化の日も輝誕生日も無理、と宣言したのちに、
ふわーっとうかびあがったものが形になりました。
メガロード進宙直後のふたりです。


楽しんでいただけると嬉しいです。








*戴いたコメントにお返事しました。(11/3)












    <remember>









勤務時間はシフト制、自分が早番なら片方は遅番と、ふたりで過ごす時間は貴重だ。
なるべく月に二回くらいは休みを合わせたいと思ってはみても、
そうそう巧くいかないのが現実。
仕事明けで一晩寝ていない未沙は、
普通の暮らしをしている人々にとっての「昼食」の準備をしていた。
外でランチができる時間帯、無理に作ることはないのだが、
無心に手を動かしたかった。
メガロード時間で正午を過ぎるころ、輝は帰ってくる。
予定は未定で、決定ではない。
そんな屁理屈が頭をよぎるが、顔を見てバタバタしたくない。
手際よくボリュームのある料理を仕上げていく。
あと少しで完成するけど、冷めてしまったら嫌ね、
と、速度を落としはじめたころ、玄関の扉は開いた。
「旨そうな匂いがすると思ったら、おれんちだった!」
子供っぽい、ひどく嬉しそうな表情で、ただいまの挨拶もせずに輝は言った。
手を洗って、ちゃんと着替えてね、と母親じみたことを言わされた未沙も、
この無邪気な笑顔が自分の張り合いなのかもしれない、と可笑しくなった。
いっただきまーすと彼は声を張り上げ、黙々と箸を動かす。
食べることに夢中でほとんど話もないのだが、その沈黙は、不愉快でも重くもない。
そんなことに気がつき、本当に家族になったことを未沙は実感した。




「疲れてるでしょう?テレビでも見てて」
空いた皿を集め始めた輝に、未沙は声をかける。
「未沙も寝てないんだろ?」
「たくさん食べすぎちゃったから、すこしは動きたいの」
わかった、と返事をした輝は座り直し、テレビのリモコンを持った。
未沙はテーブルの上を片し、ふきんで丁寧に水拭きをすると、洗い物を始めた。
久しぶりに使ったお気に入りの大皿を愛でるように洗う。
使いすぎているのは頭と神経。
今まで以上に張りつめて仕事をしているから、日常に溶け込んでいく作業が心地よい。
水遊びをしているように、のんびりと泡を流していった。

時間を気にせず、思う存分台所仕事を楽しんだ未沙がリビングを窺う。
画面に大写しになった男に、息が止まりそうになる。
「・・・なつかしいの、やってた」
輝は画面から目を離すことなく言った。
「あれから何年経つのかしらね」
未沙は隣に腰を下ろす。
「最初から見ていたの?」
「いや。途中から、偶然」
画面の男はカンフーの型をとりながら、超人的なジャンプをすると、
指先から光線を放つ。
文字通りバタバタと敵を倒しながら、彼は進む。
「これが俺達を救ったんだもんな」
輝はつぶやく。
「こんなこと言っちゃなんだけど、かなり荒唐無稽よね。
今見ると、よくまあ、これで、って思う」
「厳しいね、艦長」
ふたりは顔を見合わせる。
「でも、彼の持論どおりだ」
未沙は答えを待たず大きく頷いた。
「軍はいらない、でしょう?」
未沙と輝は声を立てて笑いだす。
画面では囚われた娘が、彼に救い出された。
敵の姿はない。
彼女は彼の腕の中で意識を取り戻し、ふたりのくちびるが重なった。
「この先は見たことなかったな」
「私も」
輝は隣に座る未沙に寄りかかった。
未沙も彼の頭に頬を寄せる。
馴染んだ匂いがここちよい。

目が覚めると、未沙はソファに身を寄せていた。
毛布がかけられているが、輝の姿はなく、慌ててあたりを見回す。
置き去りにされたようで、心が騒ぐ。
「起こしちゃった?」
輝はタオルで頭を擦りながら、バスルームから出てきた。
気が緩み、ほっと息が零れる。
「まだ時間あるんだろ?少しでもいいから、寝ておけよ」
「今のですっきりしたから大丈夫よ」
「たいして時間たってないぜ?」
輝は冷蔵庫から缶ビールを取りだし、ダイニングチェアに腰掛ける。
「俺は好きにやるから、気にしないで」
未沙をいたわるつもりの言葉だとわかっているが、びりっと神経に触る。
先ほどのようにくっついていたいのと素直に切り出せない。
口惜しいことに、結婚してもプライドが邪魔をする。
そんな未沙のことはお構いなしに、
輝は喉仏を動かしながら、おいしそうにビールを飲み干し、ぷはっ!と息をついた。
「あなたは最後まで見たの?映画」
「うん、たいしたことなく普通に終わった」
「私、覚えてないわ」
「すぐ寝ちゃったもんな」
輝はおかわりをもって、未沙の脇に座る。
軽快な音を立ててプルタブを開けた。
「飲みすぎよ」
「たった二本で言うなよ。あ、あんた、これから会議だっけ?」
「なるべく早く終わらせるつもりなんだけど・・・」
未沙はため息をついた。
宇宙には、ボドルクラスの艦隊があまた存在する。
その対策に期待されているのが、大きな実績がある、いわゆる『ミンメイアタック』なのだが、
ミンメイサイドは、駆り出されることに難色を示していた。
市民も「ミンメイがいる」ことで大きな安心があるだけに、
このことが漏れたら一大事になること間違いない。
まずは艦長、副艦長クラスで統一見解を持つための打ち合わせが、
あと二時間もすると始まる。
本来ならばその会合すら重要機密なのだが、
防衛隊長であり、艦長の夫でもある輝は、おおよそのあらすじは未沙から聞いていた。
「映像を流したら?」
何気なく輝が言った。
「実際にその場で歌わなくても、録画で充分。
中継するんだかから、区別つかないと思うよ」
未沙も深くうなずく。
「いつでも出られるようにスタンバイし続けるよりも、そっちの方が合理的なのよね。
でも生中継じゃないと効果がないと言い張る人もいるし」
輝は、あいつか、と小さく笑った。
仮にも上官よ、と未沙は軽く諌めた。
「みんな忘れてるんだな」
「なにを?」
「ミンメイだけじゃなくて、カイフンも『文化』の象徴だったってこと」
「あの映画?」
「エキセドルが重要人物として最初に挙げたのはミンメイじゃなくて、
『小白竜なる超能力者』、つまりカイフンだったんだ」
「作戦で使うとなれば、権利の関係が複雑になるのよ」
「ミンメイの承諾を取れればなんとかなるんじゃないか?
カイフン、どこにいるかわからないんだろ?
叔父さんと叔母さんに代理になってもらうとか」
未沙はすこし考え込む。
「検討してみます」
「だいたい地球にいるカイフンが、
自分の主演作が宇宙のどこかで流れてるなんて、夢にも思わないよ」
そして輝はひとりでちいさく笑いだした。気持ち悪いわね、と未沙が肩でつつく。
「可笑しすぎる」
「なにが?」
「軍はいらないって言い張ったヤツが、作戦の核になるって・・・」
未沙も噴き出した。「凄いことよね、確かに」
酔いが回ってきたらしい輝は、大きく笑い声を立て始めた。
「会議の途中で思い出したら困るわ」
つられて笑いこける未沙も、涙をぬぐいながら輝を肘で押す。
輝もやり返す。笑いながらの小競り合いは、力の強い輝に有利に働き、
いつのまにか未沙は床に押し倒された。
輝は未沙を見つめる。
これから始まるであろう甘い時間を予感して、未沙は目を閉じようとした。
「未沙のすけべ」
閉じかけた瞳を見開くと、輝は茶化すようにニヤニヤしている。
「もう!バカにしてっ!!」
未沙は彼を払いのけようとしたが、びくりとも動けない。
真顔になった輝は、彼女の名を呼んだ。
ふたりは見つめあう。
「忘れないで、小白竜」
「わかったわ。最終兵器ってことにしましょう」
真面目に応え、盛大に笑いだした。

「やだ、遅れちゃう!!」
未沙は慌てて起きあがるが、乱れた衣服を整えながら、
タイムリミットを告げるケータイを探す。
「いいじゃん、病欠で」
半裸の輝は、引っ張って腕の中に閉じ込めようとする。
「そんなのできるわけないでしょう!」
必死で振り払った未沙は、バスルームに飛び込んだ。

熱いシャワーで余韻を流す。
初めてあの映画を見た日を、懐かしく思い出しながら。








fin


















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No title

> とんぴさん

やるぞ、と思うとできないし、今は無理だと思うとできちゃうし、
ってかんじですよね。
面白いものです。

カイフン、超能力者じゃないのか―、って関心がもたれなくなったのか、
うるさいからなるべくご遠慮いただきたいと思った軍部の思惑か、
二部はほんとにどーしよーもない存在にされちゃいましたね。
当時は『この野郎』と思っていましたが、
今は、なかなか面白い存在だと思います。
マツコ風に言うと『嫌いじゃないわよ、私』っていうかんじです(笑)

No title

> ゆばさん

新婚輝には、
「あ、未沙がいる日だ。きょーおのごはんは、なーにかなー?」
ってスキップして帰ってほしい(笑)

小白竜は歌の印象が強くて、
イントロ聞くと思わず「アターック!」って言いたくなる~(≧◇≦)
カンフー映画が流行っていた時代だったから、
そこにミンメイを添えて、って感じだったのだろうなぁ。
輝と未沙が近づくための演出とはいえ、
それでも『文化』の中核だったのに、
すっかり忘れ去られちゃったよね~。
歌の力がどうとか、っていう話の流れには無用だけど、
カルチャーショックをうけるゼントラさんたちを理解するには
とても重要なものだと思う。
そこを置いてきてしまったから、
私はその後の話に入っていけないのかもしれないなぁ。

地球にいるカイフンが猛烈に怒って抗議行動起こしても、
メガロードには届かんぞ、と思うと、
なんかもう、可笑しい通り越して、かわいくなってしまうんだけど!
でもまあ、使わないんだろうなぁ。
とりあえず、人前でキスしたくない輝の抵抗ってことで!
キスだけで済まない気分にされて、
そのまま出撃なんてやってられん!ってブツブツ怒っているといいな。

No title

> mimosaさん

そうなんですよ、仕事が休みって、
もうそれだけでうれしいんですよ!!
ぐうたらな私の場合、前日に夜更かしできる、
朝、起きなくていい、だらだらしていていいって言うだけでパラダイス💛

何気ない日常しか書けませんので、
それでも楽しんでいただけるとうれしいです。

No title

> まみぃさん

そうだよ、熱でも出たことにして、休んじゃえ!って私も一票(^_-)-☆

小白竜、
あれはミンメイ特需で大人気だったのでしょうかね~?
それがきっかけになるから面白かったのに!
人生なにがきっかけになるか、わからないな、と
中学生ながらに思っていました。

そして、私もカイフンとライバーが似ているって無茶すぎると思います!
せめてライバーが東洋人なら信ぴょう性があったのになぁ。
すんごく頑張って解釈して、
カイフンが南に近い中国の流れを引いていて、
大柄で、顔立ちがくっきりはっきりだった、ってことにしましょうか。
憧れるならヨーロッパ人、というあたりに、
その当時を感じたりして(笑)
軍人云々で拒否られたから、余計に気になったのかもしれませんよね。
チャラいカイフンだったら、どーだったんだろうな~。
『ハンカチありがとう』と受け取って、
手の甲にキスとかしちゃったら・・・( *´艸`)

カイフンを吹っ切ったというか、
目が覚めた瞬間の未沙が見てみたいです。

No title

> nonameさん

ありがとうございます!
映画、すきなんですよ。
今はすぐ寝てしまうし、
なによりテレビの占有権がないので(号泣)
みられないのが、本当に悲しいです。

これもどこかにつながったり、
なにかの話の一部分である可能性もありまして、
まとまったカタチにできたらなぁ、と思います。

のんびりしたペースですが、まだまだ書き続けていきますので、
また遊びに来てくださいね。

No title

> VF-4さん

トランスフォーメーション、もうちょっと長かったら、と思いますが、
あのころのあのふたりなら、
そのまんま、ながーいため息付き合いながら終わってたりして(-_-)
そこがかわいいから、よし!

現在の基準で描き直されているのが、ファーストだと思うのですが、
面白い位に更新がされないので、しょんぼりです。
シャミーが酷かったりといろいろありますが、やっぱり期待してしまいます。
わざとそういう絵柄にされていると思うのですが、
まだあどけない三人が、どんな風に大人になっていくのか、
本当に楽しみなんですけど、
次回更新は未定になっていましたよー。くすん。
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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