SS <彼女の彼>

ここ一週間、ちょっと気が気でなかったです。
大好きなバンドのライブの先行予約でした。
結果は二日間のうち、一日しか取れなかった(涙)
・・・リベンジ開始だっ!もう一日取るぞー!!

縁起担いで、歌うこの方のお話作ってみました。
よろしかったら、楽しんでいってくださいね♪


* 戴いたコメント、拍手コメントにお返事させていただきました。(1/25)

<彼女の彼>




普段は車で通り過ぎる道を、今日はゆっくり歩いてみる。
振りかえられて、指さされたって構わない。
ミンメイは大きく深呼吸をした。
春はもうすぐそこに来ていることを感じさせる光と風の香り。
もうじき二月も終わる。
春が来たら、私も何か、変わるかな?
少しだけ気分が弾んだ。

通りに面したその店は、オリーブの鉢植えが印象的で、
誘われるように足を踏み入れた。
壁が一面、天井までガラス張りで、クリーム色に塗られた壁、
足音がやわらかく響く木の床。そしてラベンダーが淡く香る店内は、
目線にちょうどいい高さの木製の棚板があつらえられ、
白いシンプルな陶器、やさしいカーブを描く木製のカトラリーをはじめ、
生活に溶け込みやすそうな雑貨が並んでいる。
ミンメイはそのなかからティーカップを一つ、手に取ってみた。
掌になじむ感触が、どこかで出会ったような感じがする。
仕事柄いろんな場所に出かけてたから、そのなかのひとつかしら?
小首を傾げながら、丁寧に元の場所に戻す。
かわいいんだけど、もうちょっとカラフルだったらね。
自分の好みとはちょっと違っても、センスの良い品ぞろえは興味を引いた。
新しい出会いを探すように、ゆっくりと視線を動かす。

スケッチブックが数種類、目に留まる。
その中から、色紙の大きさくらいの赤い表紙のものを選び出した。
中の紙に軽く手を滑らせて感触を確かめる。
これなら書きやすそう。ペンの滑りもいいかんじかも。
うん、とうなずいて、顔を上げると、
アクセサリーのコーナーに若い軍人の後姿が目に入った。
身をかがめ、なにかを眺めている。
彼女へのプレゼントね。
小さく笑うと、ミンメイは別の棚に目を走らせる。

彼の姿がみえなくなったので、
ミンメイはアクセサリーのコーナーへ足を向けた。
シルバー系の白っぽい華奢なかんじの、
透明な石があしらわれているデザインが多い。
上品な印象だが、自分がつけるにはすこし物足りないものを感じ、
一通り眺めるとレジへ向かう。
財布を取り出そうと鞄をあける。
「包装をお待ちのお客様」
店員が落ち着いた様子で声をかけた。
さっきの軍人さんだわ。
好奇心から、何気なさを装って、声の方を見る。
所在なさげにうろうろしていたらしい彼が歩いてきて、
タイミングよくミンメイと目線がぶつかった。
「ああーっ!」
「うそっ!?」
ミンメイもつられて声をあげる。
「ひさしぶりだね」
輝はやさしく微笑んだ。

包みをひとつづつ手にして、二人は歩き出した。
「お茶でも、って言いたいところだけど、俺、これから仕事なんだ」
「私は散歩だから、ちょっとつきあうわね」
穏やかな気持ちのまま、夕方に近い日差しに包まれる。
「まさか輝があんなおしゃれなお店にいるなんてね。ほんとに驚いたわ」
「ははっ、そうだよなー」
「プレゼント?」
すこしバツが悪そうな間があくが、まあね、と輝はつぶやき、早口で続ける。
「それでも結構よく行くんだ、あの店」
・・・思い出した。
あのカップ、輝の家にあったんだ。
薄らいできた胸の痛みは、少しだけ強くなった。
ミンメイは痛みをごまかすように、明るい声をあげる。
「ね、何買ったの?」
「・・・いいじゃん、べつに!」
「教えてくれたっていいじゃない、ケチね」
「ケチって・・・」
「お誕生日なの?」
「・・・もうじきね」
未沙にかかわることは、ぶっきらぼうに、だけど照れながら輝は口にする。
そんな顔見るの、初めてよ。
今、ここにいない人物の輪郭が、はっきりと輝の中に見えることが淋しかった。


「で、ミンメイは何買ったの?」
「お仕事の道具」
袋をひらひら振るミンメイに、輝は首をかしげる。
「本格的に曲を作り始めたの。
いつまでも、きゅーんきゅーん、って、わけにはいかないのよ」
「自分の歌、見つかりそうなんだね」
「あとすこし、ってかんじかな?」
ミンメイはなにげなく立ち止まる。
気づいた輝も立ち止まって振り返る。
二人のあいだに、沈黙が横たわる。
それは季節がうつりかわる気配に似ていた。
どちらともなく、静かに視線を合わせ、微笑みあう。

「私、のど乾いたから、どこか寄るわ」
うん、と輝はうなずいた。
「待ってるから」
瞬間、ミンメイは聞き返した。淡い期待を抱きながら。
「君の歌が聞こえるのを、ふたりで待ってるから」
輝ははっきりと言った。
ふたりで。
・・・そうだよね。
一瞬ミンメイは目を伏せるが、笑顔で応える。
「早瀬さんによろしくね」
綺麗に笑えてるかな、と思いながら、ミンメイは手を振った。
「それと、結婚式には必ず呼んでね」
言葉に詰まった輝を置き去りにするように、ミンメイは歩き出した。




fin







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非公開コメント

No title

> myさん

対比というより、
輝の「よく連れていかれてる」感じが出したかったのです。
男の人で雑貨好きさんもいらっしゃるけど、
輝は「早く終わんないかなー」って未沙の後姿を見てる、みたいな。
好みうんぬんよりも、どのへんでひっかかってるかは、よくわかってる(笑)

アン王女の格好も未沙は似合いそうですね~。
私はイメージ的に、20代前半のOLさんの格好してるんだろうな、って思います。
30年前のアニメだからしょうがないとは思いますが、
「なんだ!この色は~!!どこの国だ!?」と思ったことが多かったのは
公然の秘密、ということで(苦笑)



No title

> ぱよぷーさん

1月に別れて、9月にメガロードなんて、無茶すぎますよね~!!
しかもあの二人、目立つし(苦笑)
ケロケロケロンのミンメイでも辛そうですよね。

考えてみるに、「愛おぼ」でも
失恋したてのほやほやなのに、振った張本人の輝が
未沙の見つけた歌を歌え、っていうのは過酷すぎで、
彼女の「みんな死んじゃえばいい!」って気持ち、今はわかります。
ただ、輝も、
死に絶えた世界にたった二人で一か月過ごしてたから、
シャレにならなかったけど。
だから手をあげても、嫌な感じにはならなかったと思います。

未沙にも過酷を強いたけど、ミンメイにも(苦笑)
ある意味、平等な作品なのかも・・・(-_-;)



プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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