SS <because> 6

マクロスのキーワードの一つに「文化」があります。
昔、就職試験の作文で「文化について、あなたの考えを述べなさい」という
たいへん漠然とした課題が出て、
中学生でマクロスにやられた頭を持つ私は、
「あとで文化しようぜ」とウインクするカムジンが蘇り、
やべえ、時間足りないと困ったのもいい思い出(苦笑)
何を書いたか忘れたし、もちろん落ちました。
それ以来、私は納得のいく答えを探しているのかもしれません。
マクロスに再びひっかかったのも、そこに答えがありそうだからかもしれない。
まだ見つかりませんが、見つめ続けることで見つかると嬉しいな。


さて、今回も輝視点。
間をあけずに更新したいと考えています。










<6>



輝はメガロード01の護衛隊隊長として、企画室に配属された。
しかしパトロール隊も人手が足りず、
しばらくの間は兼務で、今朝も格納庫に立ち寄る。
昨夜のジェインのことはまだ誰も知らないようで、
いつもと変わりのない会話を隊員たちと交わし、企画室の扉を開けた。

今回は技術長、主任管制官などが異動の内示を受けるが、
大半が輝と同じように、引継ぎをかねて前職との兼務となる。
メガロードは移民艦という性格上、軍の中からも志願者優先の配置なので、
まだまだ中核を担う顔ぶれも揃わない。
民間人も軍人も、マクロスやアポロなどの宇宙空間ですごした経験があるのだが、
それ故に大地に足をつけて生きていきたいと願う者が多かった。
8月就航まであと半年を切っているというのに、
人材も物資も、装備すら微妙な状態で進めなければならないメガロード計画は、
躊躇の余裕もなく、突貫作業の勢いで進められていく。


今後のスケジュールの確認と顔合わせを兼ねたミーティングは
波風立つことなくスムーズに終了した。
輝は凝った首をゆっくり回す。
未沙は軍の幹部たちに囲まれ、深刻そうに画面に見入り、小さな議論を交わしていた。
・・・やっぱ、スゲーな。
自分と未沙の差を、改めて実感する。
あのなかに入りたいとは思わない。
まして、未沙の立場にとって代わりたいとも微塵にも思わない。
しかし最近彼女が見せる、疲れをにじませた表情が気になって仕方なかった。
父親と同じくらいの、一癖も二癖もありそうな男たちと渡り合うのだから、
神経の使い方も半端なさそうで、それでもやり続ける精神力の強さに敬服する。
自分の腕の中にいるときの未沙と仕事中の未沙。
どちらもまもりたいと心から思える。
そのために戦うのだと輝は思う。


部屋から出るときに呼び止められ、隣室で待つよう言い渡される。
用件に見当もつかないが、とりあえず指示にしたがった。

控室を思わせる個室には会議用の長テーブルがふたつ、
そして部屋の奥にはパイプいすがたたまれた状態で並べられていた。
すぐに扉がノックされたが返事を待たずに開き、
輝に声をかけた松浦少佐がタブレットを片手に入ってきた。
輝は敬礼をして姿勢を正す。
松浦も儀礼的に返すが、すぐになおり、画面を開いたタブレットをテーブルに置いた。
「一条大尉、単刀直入に訊ねる。
君の私生活はどうなっている?」
スライドショーで映し出される昨夜のジェインとの様子、そして未沙の部屋に入る自分の後姿。
・・・何日か前に街でばったりあったミンメイと並んで歩く光景。
俺の跡をつけていたのか?
切り替わるたびに浮かび上がる自分の姿に愕然としながらも、
汚らしいやり方に怒りがこみ上げ、
口から飛び出しそうな感情を閉じ込めるようにこぶしを握る。
「これは今朝、ネットで流れたものを軍が抑えたもので、こちらは三日前に抑えた記事」
そして素早く画面を切り替え、ネット記事を開いた。
『私の彼はパイロット―――メガロード艦長に大抜擢のエリート女性士官のすべて』
面白半分に踊る文字が、頭を酸欠状態のように白くしびれさせていく。
「君たちはどう考えてるかは知らんが、
もう市民の注目を集めるような存在であることを十分留意することだ。
以後、気を付けて行動するように」
はい、と輝は感情を押し殺したまま返答を返す。
松浦はタブレットを拾うようにつまみあげた。
「あの早瀬さんの彼がどんなヤツなのか興味津々だったよ。
もてるんだね」
言葉と様子を崩して、松浦はくっくっと嗤う。
・・・上官だから手を出せない。
自分の感情の限界が近いことを輝は気づいていた。
ケータイの低い振動音に気付いた松浦は、話を切り上げて退出した。
敬礼で見送った輝は、扉が閉じると拳を壁に叩き付ける。
鉄製のそれはびくともせず、鈍い痛みだけが残った。




輝は自室のベットに寝転がり、ぼんやりと天井を見ていた。
今晩来るはずだった未沙は、遅くなるから自室に戻ると連絡が入った。
輝もあそこまで言われた直後に、そっちで待っているとは言えなかった。
そして未沙も何か言われていると察しがついた。
まさか、またへんな風に誤解して怒ってるんじゃないだろうな?
こじれるとめんどくさいことになることは、経験上よくわかっている。
早めに顔を合わせ、数々の写真の詳細も話したい。
なによりこの不安定な気持ちを落ち着かせるのに、となりに未沙にいてほしい。

背筋をのばしてお偉方に対応していた、日中の未沙の姿が脳裏に浮かぶ。
彼女を守る方法が俺にはあるのか?
輝は頭を抱える。
家庭もちでもない、自分で稼いで暮らしている独身の自分たちが、
面白半分でスキャンダラスに取り沙汰されることに不服はあるが、
このまま逢瀬を続ければ、未沙の格が堕ちていく。
貶めていく原因が、自分の存在なのは耐えられない。
そして未沙のいない毎日も、耐えられない。

ただ一緒にいたいだけなのに。
名案も思い浮かばず、やるせなさにまかせて、輝は寝返りを打った。







back                     next

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム