SS <apollo> 5

連休も終わりましたね。
なんか、淋しいな。
次のまとまった休みは夏休みかと思うと、先が長いわ~。

さて、<apollo>続きです。

楽しんでいただけるとうれしいです。



* 戴いたコメントにお返事をしました(5/12)(5/15)



<apollo>5





脇にある大きな窓には、地球が見える。
緑の占める面積が以前より広くなったかんじがしてうれしい。
しかし目の前の上官は、
不自然なほど窓に背を向けて座り、早々に用件を切り出した。
「俺はあんたの意見を聞きたい。
この件は一回も発言がないよな」
この件だけじゃない。
未沙がだれかと論戦を張るときは、静観することにしている。
下手に口を挟もうもんなら、
よき理解者がそばにいて、うらやましい限りだ、と嫌味が未沙に刺さる。
彼女はむきになることはなく、
ええ、ありがたいことですわ、の一言で切り捨てるのだけど、
俺が嫌なのだ。
「・・・そうですかねえ?」
「あんただって、ファーストコンタクトをしたひとりだし、
あの早瀬さんと対等でやりあえる数少ない軍人なんだから、
意見がないわけもないだろ?」
「まあ・・・ねぇ・・・」
「なぜ言わない?」
鋭い視線で射るように見つめられる。
のらりくらりとかわして逃げられる状態ではないことを悟り、
俺は口を開く。
「とらえ方は彼女と同じだけど、
現実の対応策は松浦少佐と近いです」
彼の目が輝き、まずい、使われる、と反射的に思った。
「だからって、どっちの方につくとか、つかないとか、
そういうのはごめんですよ!」
俺の言葉に彼は、それじゃない、といわんばかりに小さく首を振る。
「なんでそれを言わないんだ?」
「俺が意見を出したところで、カタがつきそうもないし、
今はそのときじゃないと思ってます。
口をはさむと、へんなところでお偉方が彼女に絡みますからね」
まあな、と彼はうなずく。
「でも、あんただって軽くない肩書背負ってるんだぜ?
いいのか、それで」
「話の流れによって、遠慮なくいかせてもらいますよ。
相手がだれであれね。
それより松浦少佐こそ、この件になにかこだわりでもあるんですか?
らしくないですよ」
喧々諤々やるより、クルクルと適当なところで丸め込んで、
妥協案を探るのがいつもの彼の手腕なのに、真向から未沙と衝突している、
そのことが俺にとっては意外でしょうがない。
「こだわり、か・・・」
彼はいったん言葉を切る。
一瞬悩んだ表情を見せたが、口を堅く結んだ。
「ええ」
俺も気になって、話を促したが、彼は唇をかみしめる。
いつもはふざけてはぐらかすのに、
アポロに来てからの彼は、どこか違う。
ふとした拍子に今のような、剥き身の感情が顔に浮かぶ。

ゆっくりと瞬きをして、彼は俺を見る。
「早瀬さんが殺されたら、やったヤツ赦せる?」
突然話が変わり、俺はとまどう。
「ねえ。
早瀬さんがいたっていう痕跡も、
跡形なく全部焼き尽くされちゃったら?
・・・今のあんたなら、わかるよな。
俺が言ってること」
彼の瞳に激しい感情が浮かんだ。
「共存なんて無理だわ。俺」

彼の目を見つめたまま、その場で息を呑んだ。
先に目をそらした彼は、ゆっくりと立ち上がる。
「わりぃ、重い話で。
別に懐柔してるわけじゃないから、気にしないで。
あくまでも俺、個人の意見だ」
そして軽く俺の肩を叩き、その場を後にした。

動く気力もなくて椅子にもたれかかり、瞼を閉じる。
松浦少佐の問いは、心に重たくのしかかった。
彼の示したことは、特別な状況ではない。
バルキリー隊でも、
地球人とマイクローン化したゼントラ人の対立がかなりあり、
仲裁に入ってはいたが、両者をなだめることに精一杯で、
ここまで自分のこととしてとらえたことはなかった。

生き延びた人たちは、大切なだれかを失っている。
俺はあの戦いで、先輩や柿崎、仲間たちを失った。
未沙は自分も危ない状況だったうえに、
お父さんの最期を画面越しに見届けている。
思い出すのか、時折、声を立てずに涙を落とすことも、
うなされて泣きながら飛び起きることも俺は知っている。
ゼントラーディの立場改善や、平等を強く訴えるのは、
父親を説得して和平交渉ができなかった、
一介の下士官の意見としてしか扱われなかった自分を
悔いているからじゃないかと感じていて、
彼女の気持ちは、なんとなく理解できる。

そして今年一月のマクロスシティ攻防戦を思い返す。
俺の目の前でカムジン艦がマクロスに突っ込んでいく光景を。
バルキリーに乗りながらも、
彼女の名を叫ぶことしかできなかった自分を。
各機に指示を出す彼女のいる場所は、
戦闘になれば危険の度合いは増す。
安全なところでぬくぬくしてるあんたになにがわかるんだ、と、
食って掛かったこともあったが、
戦いが始まれば、安全な場所はなくなるのだ。
未沙を失なったと、
絶望で冷たく凍えていく自分を溶かしてくれた、通信機からの彼女の声。
その夜に通じ合った想い。
手に入れたぬくもりを、失うことになったら。
未沙を護るためにある、この二つの手が届かなかったなら。
想像しただけで、ぞくり、と肌が粟立つ感覚がして、無意識に両腕を抱えた。

はっきりとわかる。
俺は相手を赦すことはできない。
正気でいられる自信もない。

感情論ではなく、未沙は彼らの待遇を変えようと、必死になっている。
彼女が危惧するように、メガロード就航後に船団で反乱を起こされたら、
マクロスシティ攻防戦の二の舞だ。
宇宙空間なので、比較にならないくらい被害は大きいだろう。
終わってしまったことではなく、これからどうするか、どうなるのか。
過去は変えることができない。
だから未沙は、未来を見つめて進んでいる。
憎むことはたやすいことだが、受け入れていくことは、本当に難しい。
そのことは、失いたくない、かけがえのないひとができて、ようやく実感できた。

そして、今までは俺に嫌味しかぶつけてこなかった松浦少佐が、
どうして心を開いてきたのか、よくわからない。
しかも、俺自身がはっきりと気づきたくなかったことまで穿り出してくれた。
憂鬱な気分を吐き出したくて、長いため息をつく。


ふと、窓の外に目をやる。
地球はなにも変わらず、青く輝いていた。







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非公開コメント

No title

> ぱよぷーさん

ここは触れない方がいいのでは、と思いながら、
あれだけの大きな戦いの後で、
人々は互いをどう感じていたのか、考えてしまったら、
避けては通れない道と、踏み出しました。
巧く表現できるよう、精一杯がんばります。



No title

> ゆばさん

ええええーーーーっ!
そのお話、私も読んでみたかったです~(T_T)
閉鎖しないで~っ、もう一回開けて~!!←絶叫
30周年記念ということで(笑)

30年の間に、どれだけの名作が生まれたのか、
薄い本を必死で探しに行きたくなってしまいます。
過去ログとか、まとめとか、残ってたらいいな~(/_;)

そして<apollo>ですが、
だんだんと話が暗く重くなってます(大汗)
それでも楽しんでいただけてうれしいです~ヽ(^。^)ノ
この話の続きも、書いて消しての繰り返しの日々ですが、
(進むどころか、減ってる時もあるという・・・)
納得いくまで向き合っていこうと思います。


プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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