SS <song for you> 4

もう七月ですよっ。
冷房入れるほどでもなく、でも暑いという中途半端さがまだ梅雨だなあ、というかんじです。

「愛おぼ」のDVD、ついに開封。
「劇場版」と「HDリマスター版」見てみましたが、画質の変化はあんまり感じなかったなぁ。
でもいいんです!両方あるところが大事~(笑)


そんなこんなで、続きです。
今回は「好き嫌い」がはっきりでそうです。
そして次回更新は、わりと近い時期を予定していまーす。
(一週間以内には必ず!!)



* 戴いたコメントにお返事しました。(7/7)


<4>




しばらく前に、娘々に封書が届いた。
フェイチュンは差出人を見て、一瞬顔を曇らせ、とまどった。
しばらく眺めて、ため息をひとつつくと電話をかける。
「あなた宛てに手紙が届いているわよ。
できるだけ早いうちに取りにいらっしゃい」
そのとき、だれから?と問われなかったのが、唯一の救いだった。
人生には理不尽で、しょうがないと割り切らねばならないことがあるが、
そのなかのひとつだから、と自らに言い聞かせ、
たったひとりの姪の幸せを願う。


『愛おぼえていますか』はメモリープレートに収録されていたメロディと、
未沙が訳した歌詞が公開され、
マクロスシティのテレビ局と最大手のSNSが連携して、大々的に歌い手の募集を始めた。
演奏やイメージ映像の動画を、開設された応募サイトに投稿するとエントリー完了。
選抜方法は、一次審査として動画を見た者が、気に入った応募者のボタンをクリックする。
最終選考はポイント獲得数の上位10組のステージ上で演奏を、
テレビ、ネットで中継し、入場者と視聴者の投票で決める。
自ら歌わずとも、誰でも参加できるオーディションは、地球上まれにみる盛り上がりを見せ、
様々な人びとの声で歌われる『愛おぼえていますか』は、
今や、老いも若きも、地球人もゼントラーディ人にも親しまれている曲となった。

ミンメイは、事務所でスタッフたちと、他の応募動画を見る。
早々に応募して、現段階では上位に食い込んでいるが、
最終選考の対策は念入りに練られ続ける。
知名度のあるミンメイは有利でもあったが、アンチも多く、
ステージに穴をあけて、男の部屋に転がり込んでいた事実は、
今は表立って出てこないが、業界関係者の間で知らぬものはいない。
小さなゴシップがポツポツばらまかれるが、大事に至らないのは、
この企画の真の主催者が統合軍で、
かつて『ミス・マクロスコンテスト』に女優のジャニス・メリンが出場したときと同様に、
数グループには事前に参加の要請があったから。
もちろんミンメイもそのひとりだ。
しかし、あのときのように一般応募者の中から、ずば抜けた新人が見つかる可能性もあり、
状況は5分5分、ともすればもっと分が悪くなる状況だ。


それからまた、しばらく経った頃、
さわやかに晴れ渡った日が、夕方に差し掛かる前。
ミンメイのケータイにフェイチュンからの着信があり、
ともかく今日、店に寄るようにと伝言が入っていて、彼女は小首をかしげる。
また、町会長さんの頼み事かしら?めんどくさいのじゃないといいけど。

ミンメイは新しい曲をレコーディングするために、スタジオにに入る。
ヘッドフォンをつけ、深く呼吸してから合図を出すとイントロが流れ始め、
声を曲にのせた。


店の忙しい時間を外した午後9時を回るころ、ミンメイは娘々の扉を開ける。
「おかえりなさい、待ってたのよ」
フェイチュンはミンメイの姿を見つけるや否や、奥に行くよう促した。
「久しぶりにね、帰ってきたの」
弾む彼女の声に戸惑いながら、背中を押されていく。
「カイフン!ミンメイ来たわよ」
フェイチュンは大きく弾む声で、一人息子の名を呼んだ。

カイフンは優しく、まっすぐな人だ。
しかし星が一つ滅んだ大きな戦の後という特殊な環境は、
彼の高い志を許さず、押し流されて歪んでいく。
ミンメイは、ただ見ていることしかできなかった。
その状況が辛くなり始めた頃、偶然に輝と再会し、
死を覚悟した戦いに赴く直前に気持ちを伝えてくれた輝の存在が、
ミンメイの中で大きくなっていった。
カイフンはその様子を察知して、ますます二人の関係は悪くなっていく。
しかし、歌えない、歌わないミンメイに、
「いつか、優しい歌を聴かせてくれ」と立ち去ったのは、
彼の優しさだったと、今ならわかる。
罵り合い、憎しみ合う前に。
もう二度と顔も見たくないと、思う前に。
楽しい時間と、華やかな瞬間、
そしてその影のような重い時を過ごしたカイフンを思い出すと、
まだ心のどこかが軋むような感覚を伴う。


カイフンは厨房から、前掛けで手を拭きながら姿を現した。
ミンメイには意外すぎて、こわばった感情は一気に砕ける。
「兄さんがお店の手伝いしてるなんて!
叔母さんがあたしを呼ぶわけよね」
フェイチュンは華やかに笑い声を立てる。
やれやれ、と、行った様子で肩をすくめたカイフンの後ろから、
シャオチンも顔を出す。
「あんまりめずらしいから、すぐに見せたくなったんだよ」
はじかれたようにミンメイも、そしてシャオチンも笑いだす。
こんな光景は、どれくらいぶりだろう?
にじむ涙を笑顔で隠した。


少し早目に店を閉め、夜食をつまみながら、四人で近況を語り合う。
ミンメイの動画は、ご近所の常連たちからも好評なこと、
また、悪乗りした何人かが応募したことなどで盛り上がった。
「町内のど自慢じゃないのになぁ」
「でも、案外そういうのがはいっちゃったりして。私も出ようかしら?」
「あら、だめよぉ!ライバルが増えちゃう」
シャオチンとフェイチュンが、いつもよりはしゃいで見える。
そこに、二度と会うことのできない、
自分の両親を叔父と叔母に重ね合わせてみると、
胸が詰まる感じがして、せつなくなった。
「・・・ミンメイ?疲れたの?」
心配そうなフェイチュンが、ミンメイをのぞき込む。
「ううん。おなか一杯になっちゃったのに、
まだおいしそうなのが残ってるから、悩んじゃった」
「いつでも作るから、無理することないさ」
シャオチンも声をかけてくれる。
ありがとう、と返して、ミンメイは再び笑顔を浮かべた。









☆ シャオチン ・・・ミンメイの叔父 カイフンの父
  フェイチュン ・・・ミンメイの叔母 カイフンの母

  地の文で「叔父、叔母」を使ったら、違和感があったので、お名前にしてみました。





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No title

> ぱよぷーさん

人間、みな誰かのいいひとで、嫌な人なんですよ♪
彼はちょっとまっすぐすぎるんだと思います。
生きるのが辛そうだな、カイフン。

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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