SS <song for you> 5

さて、昨日、今日と続けてUP。
本当は一回分にまとめたかったけど、長かった(大汗)
次回はちょっと開くと思われますが・・・頑張りますっ!!!



* 戴いた拍手コメント+コメントに、お返事しました(7/11)




<5>




テーブルの皿が空いていく。
瓶の中身が底をついて、シャオチンは機嫌よく席を立った。
「ミンメイも今日は泊まっていきなさいね。もう遅いもの」
フェイチュンは部屋の支度を整えるため二階に上がる。
ふたりが作り出した明るい空気は、やわらかい気配を残してくれていた。
「歌、変わったな」
カイフンがまっすぐ見つめてくる。
それは、幼いころ見ていたまなざしに似ていて、
ミンメイもそのころに戻った気分になれた。
「私だっていろいろあったもの。すこしは大人になったでしょ?」
「一条君のところにいたんだって?」
彼は視線を手元におとし、静かに問う。
そこにはミンメイを苛立たせた、嫌味も妬みもない。
「私ね、フラれちゃった」
カイフンは視線をあげた。ミンメイは小さく笑う。
「輝、結婚したの。もうじきお式を挙げるんだって」
おどろいて目を見開いたが、カイフンは穏やかに言う。
「それは急なことだな。相手はあの?」
「そう。
一緒にいた軍人さん。早瀬さん」
ミンメイは言葉を切り、カイフンは静かに待った。
「今思うとね、輝の部屋、キレイすぎた。
そのときは全然気づかなかったけど、早瀬さんがいろいろと整えていたの。
私の入るすきまなんてないのに、家においてくれたわ」
あのとき、あのひともつらかったはず。
ふたつの恋がぶつかりあって出来た傷は、自分だけが深いわけじゃないと、
ミンメイは思う。
胸の痛みは、時とともに癒えてはいるが、まだ消えていない。
「・・・そしてね。
輝が、君には歌があるじゃないか、って。
私の周りにいた男の人はみな、同じようなことばっかり言うの。
笑っちゃうわ、ほんとに」
苦笑するミンメイに、カイフンは眉根を寄せた。
「それで歌うことにしたのか?」
「違うわ。
そんなに簡単に歌おうって思えないわよ。
私、あのとき本気でやめること、決めてたもの。
だから、歌わない私でも輝なら受け入れてくれる、って思っていたんだけどね。
1月に、ここで大きな戦いがあって、シェルターに避難したの。
あんなにたくさん人が集まっていたのに、
私がリン・ミンメイだって、だれも気づかないのよ。
皮肉よねぇ」
「・・・自分の生死もかかってるからな」
「たしかにね。
そこをでて、本当に行くところがなくなっちゃって、ここまで来て。
避難所から帰ってきた、叔父さんと叔母さんに怒られちゃった。
帰ってくるなら、ここだろう。ここは、お前の家だって」
じっと、カイフンを見つめる。
「どんなにうれしかったか、わかる?」
その言葉をあなたが言ってくれていたなら、
私たちは今でも一緒にいたのかな?
それはまだ、口に出せなかった。
「毎日一緒にご飯食べて、おしゃべりして、笑って、
お店のお手伝いをしてるうちに、私、歌いたくなったの。
ただのミンメイになっても、歌は私から離れていかなかったみたい」
自分では気づけなかったことだが、輝はわかっていたのだ。
それだけでもミンメイの心に、温かいものが流れ込む。

「俺が、そうさせてやれればよかった」
カイフンはテーブルの上に組んだ手に視線をおとして、つぶやいた。
「余裕がなくてすまなかったと、今なら思うよ、ミンメイ」
取り繕いでもなく、カイフンの本心を感じ取ったミンメイは、大きくうなずいた。
「ありがとう、兄さん。
その気持ちがほんとうにうれしい」
カイフンは顔をあげた。
「この数か月、いろんなことがあったけど、私なりに解決してきたわ。
でも、最後まで引っかかっていたのは、あなたのことだった。
私とのことで、兄さんが帰りづらくなってたら、
叔父さんと叔母さんに申し訳ないな、って、気になっていたの。
だから今日は、会えてよかった」
「俺もだ・・・」
ふたりは見つめあいながら、わだかまりが解けていくのを感じた。
ずっと前から知っている親しみと安らぎに包まれていく。

そして穏やかに佇むカイフンに、
ミンメイは今までとははっきりと違う何かを見つけて、訊ねる。
「ね、突然帰ってきたのって、本当に動画のことだけ?」
不意打ちを食らい、柄にもなくあたふたと言葉を探すカイフンに、
ミンメイは追い打ちをかける。
「兄さんらしくないわ、なにを慌ててるの?」
ふぅーっ、と大きく息をつくと、カイフンは諦めたように口を開いた。
「ここに、連れてきたい人がいるんだ」
「女の人?」
「いや、男の子」
目を細め、カイフンの口許が優しくゆるんだ。
「子供って・・・まさか・・・」
「ちょっと前に知り合いになった親子だよ」
カイフンは少し憮然とする。
「中華料理嫌いだって言うから、
地球で一番美味い店に連れて行ってやるって約束したんだ」
「あら!ここは宇宙で一番美味しいっていわないと!!
叔父さん喜ぶわよ」
そうだな、とうなずいたカイフンは続ける。
「父親はあの戦いで戦死して、おぼえていないのに、
ずっと母親に教えられていたんだろうな・・・
軍人は悪くない、って、
学校にも上がらないチビが、俺に真正面から向かってきたんだ。
そんなところから、いろいろあってね」
「一緒に住んでるの?」
「いや、すぐ近くには住んでる。
先のことはわからないけど、今は、チビとの約束を守らないとだしな。
そんなところにお前の歌が聴こえてきて、ともかく一回帰ろうと思ったんだ」
ミンメイは背筋を伸ばす。
「しかしすごいわ。
変わるときって、いろんなことが急に起こるのね。
私達があそこで別れてから、まだ半年よ?」
「変わらなきゃいけない、分かれ道だったんだな、きっと。
そして、これだけは言いたかった」
カイフンは言葉を切った。
そしてミンメイをまっすぐ見つめ、視線をあわせる。
「やさしい歌を聞かせてくれて、ありがとう。
こんなに早く聴けるとは、思わなかったよ」
ミンメイは次第に和らいだ表情になっていく。
「・・・どういたしまして」
ふたりは頭を下げあい、顔をあげると微笑みあった。

二階からフェイチュンが呼ぶ声がする。
ミンメイは大きな返事をして、立ち上がった。
「じゃ、兄さんはここの後片付け、お願いね」
「しょうがないなあ」
カイフンも立ち上がる。
「おやすみなさい」
おやすみ、とカイフンの声を背中に聞いて、ミンメイは階段を駆け上がった。









* カイフンの近況は私の創作です。





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No title

> ゆばさん

拍手コメとコメントの合わせ技、ありがとうございます!
マクロスという作品自体が、
輝の視線を大事に作られているから、
どうしてもカイフンが憎たらしくなるのだと
最近気づきました。
輝からしたら「このヤロー」なんですよね~。
どこまでいっても「このヤロー」(苦笑)
しかし娘娘ご夫妻の息子だから、
そんなに悪いヤツではない気がします。
彼は彼のフィールドで幸せになってね、と期待を込める。
そして紫のタキシードはおよしなさいと(笑)

そんなカイフン出場でもゆばさんが喜んでくださって、
私も書いた甲斐がありました(涙)
こちらこそありがとうございます。

カイフンが輝に対して辛くあたるのは、
可愛い従妹も両親も「輝ちゃん」で、
自分の居ない実家になんだか溶け込んでるよ、この野郎
って気持ちがベースなんじゃないかと。
自分の場所取られたと感じたのかな。もちろん無意識でですが。


そしてケータイ版の文字について、ご指摘ありがとうございました。
今度は見やすいはず!
本当に助かりました。
またなにか不具合あったら教えてくださいね♪



プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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