SS <song for you> 6

夏休み前の「プレ夏休み」といった三連休、
たのしくおすごしでしたか~♪
私は自宅でのんびりです。
昨日本買っちゃったから、(いつもなんか買っちゃってるけど)
ごろごろしながら読みふける、サイコーなひとときです(*^^)v


お待たせしました。
ようやく式の当日です。

視点が入れ替わるので、ちょっと読みづらいかもしれませんが、
楽しんでいただければ、うれしいです。




* 戴いたコメントにお返事しました(7/25)




<6>




明け方まで雨が降っていたが、いつの間にか上がっていた。
会場になるその店の、小さな前庭の植え込みも青さを深め、
深い緑の匂いを含んだ空気は澄み渡り、
ポーチに置かれたテーブルセットの傍らで、松浦は深く息を吸い込む。

輝と未沙が準備のために休みを取った翌日、松浦はクローディアから呼び出された。
「忙しいなか申し訳ないんだけど、あなたの力が必要なの」
大きな瞳は、なにやら企んでいるような、
いたずらを始める子供のような光をたたえ、松浦を見つめる。
彼と彼女の接点は仕事を除けば、たったひとつ。
「んー、条件によりますねえ」
もったいぶってかわすと、小さく笑って、彼女は続ける。
「ほんとは、気になってるんでしょ?
時間がないんだから、さっさと始めましょう」
松浦はもろ手を挙げた。
「ブリッジ出身のねえさまたちは、いつも強気でいらっしゃる」
「そうじゃなければ、務まらないわよ」
クローディアも負けずに言い返す。
「で、このたびのワタクシの任務は?」
「素敵な演出を」
彼女は満面の笑みを浮かべて言った。
「あなたのセンスに期待してるわよ」

結婚式には控えめすぎるんじゃないか、と思うくらいの
シンプルなウェルカムボードが入口に飾られている。
ホールには円卓がならび、奥にはひな壇に似せて一段高くなった席。
室内は淡い色の花々に彩られ、落ち着いた雰囲気をたたえている。
今朝早く、様子を見に来たクローディアも大きくうなずき、
手厳しいプロデューサーの合格がでて、彼も満足した。

準備は上々。
しつらえをひととおり点検し終わると、その店を後にした。

招待客のリストに、彼の名はなかった。
そのころは未沙ともめ、輝をネチネチねぶりたおしていたから、
当然すぎる報いだが、彼自身が、
マクロスのブリッジクルーの中に身を置くのは遠慮したかったので、ちょうどよかった。





松浦の後姿が見えなくなった頃、クローディアと未沙が会場に到着した。
会場に足を踏み入れた未沙は、感嘆の声をあげ、クローディアは微笑む。
手配したスタイリストが到着するまでのわずかな時間なのだが、
未沙は封をされた封筒の束を取り出した。
すべて任せろ、とクローディアには言われたものの、どうしてもこれだけは、と、
仕事の合間に招待客にメッセージを綴った。

相手を思い浮かべているのか、笑みながら丁寧に置いていく。
仲間達とは部署が分かれ、廊下ですれ違う程度だったり、
食堂で一緒になれば運がいいというくらいで、
ゆっくり話す時間を作り出すのも難しくなっていた。
未沙は飛び立つ前に、どうしても自分の言葉で伝えたかった。
感謝のきもちと、旅立ちの挨拶を。

「ほら、もう時間ないのよ。私が代わるわ」
見かねたクローディアは声をかけるが、生返事で、ペースは崩さない。
最後の一枚を静かに置いたとき、車のドアが閉まる音がして、
未沙の支度のはじまりは告げられた。





グローバルは数日前から私物を総ざらいしていて、未沙の父の所縁の品を探していた。
長年家族ぐるみのつきあいがあったので、
グリーティングカードのやりとりもあったはずだが、
必要最小限の荷物でマクロスに乗り込んだので、確実にこれがある、と断言ができない。
しかし、なにもないとも言い切れない。

式では父親の代わりに、輝の元までエスコートする。
父親のように自分になついてくれた、ちいさなあの子が、
十代の初めに辛い大きな別れを経験し、そこから現在に至るまでの道程を思いかえす。
それは公私ともに彼女の成長を見届けられ、幸せなことだったと実感する。
しかし、自分が命じたとはいえ、彼女らが宇宙に飛び立ってしまうことに
淋しさをおぼえる。
未沙も輝も、若輩と言えども、今の統合軍では重要な役割を担える貴重な人材で、
短い間でも重ねあげた経験が、
これからの彼らの任務を助けてくれることはわかっているが、
若干の不安は、彼の心から消えない。

少々複雑な想いを抱いて過ごした彼が、気晴らしに始めた『探し物』だが、
手間をかけ、時間を重ねてもハガキ一枚、メモ紙一枚もでてこないので、
少々自棄になりかけていた。
落ち着きを取り戻すため、パイプに手を伸ばすと、不安定におり重なった物たちにぶつかり、
よけておいた亡き妻の写真が倒れる。

・・・そういえば。
彼はパイプではなく、写真立てを掴むと裏蓋を開けた。





お店のスタッフは厨房で忙しく動き回っていて、料理の準備の音が漏れ聞こえる。
未沙は控室へ向かい、ひとり残されたクローディアは、
保護ケースからノートパソコンのディスプレイ程度のフォトフレームを取り出した。
その店の玄関からホールに向かうまでのほんの短い廊下の、
一番視線が集まる壁にニッチが切ってあり、リトグラフが飾られていたのだが、
今日は特別に場所をあけてもらっていた。
丁寧にフレームを立て掛け、角度を調整し、画面に触れて始動させると、
映し出された映像を見て、彼女は大きくうなずく。

外に出て、まだ雨の匂いが残る木々を眺め、空の深いところで視線を止めた。
・・・まさか未沙に先、越されるなんてね。
小さく笑うと、腕時計で時間を確認した。
タイミングを計ったかのように、熱い紅茶がサーブされる。
礼を述べて腰を下ろし、一口飲むと、時間に追われていた感覚が消えていく。
いままでのこと、これから先のことを、とりとめもなく思いめぐらせると、
たとえるなら学校を卒業するような、
生きる上での節目が、自分にも訪れているような気がした。
私にも新しい世界が用意されてるのかしらね?
再び空へ顔を向ける。
返事は、はなから期待していないが、
目を凝らしたら、なにかが見えるかもしれないという、叶わぬ願いは込めて。

大きく首を回したあとに腕時計を見ると、再びカップに口を付けた。







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>ぱよぷーさん

うちのは、おしゃれになるかどうか・・・(^^ゞ
なかなか難しいです(汗)

花嫁さん、泣いちゃったらお化粧崩れちゃうね(*^。^*)


プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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