SS <song for you> 9

暑いです。ぶいです!

近日中に次回を更新予定ですので、
お時間あるときに、楽しんでくださいね。




* 戴いたコメント、拍手コメントにお返事しました。(7/31)




<9>





先刻まで新郎控室だった部屋に、今はアコースティックギターが二本置いてあった。
「本番一発勝負なんて、無謀なイベントね」
ミンメイは松浦を軽く睨む。
「あのリン・ミンメイなんだから、それくらい大丈夫さ」
これも軽い調子で返しつつ、椅子に腰かけるとギターを手に取って、調整を始める。
カイフンも同じように音を合わせ始めた。
「とりあえず一回、合わせてみよう」
松浦はカウントを取った。

「・・・レイ。ほんとに練習したの?」
「俺もなぁ、そんなに暇じゃねーんだよ。
つーわけで、カイフンさん、よろしくね。
俺、いっそのことタンバリンとか・・・」
「だったらいらないわよぉっ。
ちょっと!歌詞は入ってるでしょうね、忘れたとか言わせないわよ」
「ばれたか~っ」
ミンメイと松浦の遠慮のない会話に、カイフンは口をはさめずにいた。
「仲、いいんだな」
「いいっていうの?こういうの!?
まじめにやれば、レイはそこそこやれるのに、このいい加減さ!」
「だって俺、これ本業じゃないもーん。趣味だもーん」
ジャーンと弦をかき鳴らし、ミンメイに睨まれる。
「ミュージシャンじゃないんですか?」
カイフンにむけて、少し口の端をあげて、松浦は言う。
「軍人同士の結婚式で、客も軍人ばっかりだよ?
そんなしゃれた人間がいるわけないじゃないですか」
カイフンの表情がこわばる。
「ま、あんたも覚悟してきたんだろ?
今日は停戦な」
ぽんぽんと肩を叩き、再びかまえる。
「で、もう一回あわせようぜ」
さっさとはじめろ、と言わんばかりに視線を送ると、カイフンはカウントを取った。
ばらばらだった音は編まれて、メロディになる。
歌い終えたミンメイも満面の笑みをうかべた。



結婚式といっても、親しいものばかりの集まり。
人前式が終わると、立食形式のパーティは和やかな雰囲気で会話に花が咲く。
未沙はお色直しで一度退席した。
クローディアは時間を確認する。
サイレントマナーにしていたケータイが受信したメールでは、
ミンメイと合流できたとあったので、
もう案ずることはないはずだが、やはり気にはかかる。
なぜ、今、ミンメイを呼んだのかしら?
クローディアの心中は、少しだけ穏やかではない。



「ほんとに変じゃない?」
淡いピンクの、輝の選んだドレスをまとった未沙は、迎えに来た彼に問う。
当の輝はというと、ドアを開けた瞬間に飛び込んだ、いつもとちがう未沙に、
戸惑いながらも目を離せなかった。
その様子に不信感を抱いた未沙の問いに応えられず、立ち尽くす。
「ねえ!ちゃんと聞いてるの?」
「オニには見えない」
口からは悪態が零れる。
部屋ではまだ、スタイリストが道具の始末をしていたから、
どうしたものか、彼自身も混乱していたのだ。
可憐なドレスには不釣り合いに、未沙は片眉をあげて輝を睨む。
輝は、彼女の手を取った。
「行こう」
ぶっきらぼうに促すと、未沙も不機嫌に立ち上がった。

部屋のドアが閉まる。
今日式が始まって、初めて二人きりになった。
「・・・かわいい、よ」
輝は小声で囁く。
とっさのことで、未沙は聞き返した。
輝は少し顔を赤らめて、ふて腐れる。
「なんでもないっ」
それだけで未沙は満足した。
ふわりと微笑み、足を踏み出すと淡いピンクのドレスを揺れ、乾いた衣擦れの音がした。
輝は目を細め、彼女を見つめる。
「未沙」
呼びかけられ、足を止めて輝を見る。
輝は、さっきよりもはっきりと伝えた。
「愛してる」

未沙はその日、一番綺麗な笑顔を彼に贈った。
「私もよ」
改めて腕を組み直し、一歩、踏み出す。




会場の拍手のはじけ具合で、三人は部屋から出た。
そのとき松浦のケータイが振動し、軽く舌打ちをして発信元を確認して切った。
「わりい。どうしても行かなきゃならなくなったわ。
さっきの様子だと二人で充分いけるから、がんばれよ」
ミンメイは睨むが、松浦は片手で拝みつつ玄関へ向かっている。

「まったく。これだから軍人さんは」
軽く愚痴って、カイフンを見上げる。
「ま、ふたりでがんばりましょ」
蚊帳の外のカイフンは、うんうんと頷くことしかできないが、
あわただしい他人がいなくなって、内心ほっとした。
「そういえば、兄さんと共演って、初めてね」
「映画以外ではな」
二人はそっと会場を伺う。




「これを君に」
目立たぬように部屋の片隅で、グローバルは胸ポケットから封筒を取り出す。
未沙はほかの参列者と話し込んでいて、輝がそれを受け取って開けた。
幼い女の子が、今よりも若いグローバルと、
見覚えのある軍人と笑っている写真だった。
「・・・これだけが写真立ての奥に残っていたんだ」
「これって・・・」
グローバルはうなずく。
「小学校に入る前くらいじゃないかな?
東京のお宅にお邪魔したときのだよ」
グローバルは、輝を力強く見つめ、そしてまた写真に目を落とした。
「一条君。
この笑顔をまた見ることができて、私は本当にうれしいんだ」
近くではじけるような明るい声が上がった。
ミリアになにか言われて、声を立てて未沙が笑うのを、ふたりは眺めた。

グローバルに促され、輝がそれをポケットにしまう。
「あとは頼んだぞ」
肩に置かれた手は、熱く、重かった。
「はい」
輝はしっかりとうなずいた。







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> VF-4さん

過分なお言葉ありがとうございます(#^^#)

小さいころから知っている、だけではなく、
彼女を変えた大きな出来事にかかわった彼だからこそ、
未沙の笑顔は、心からうれしいだろうと思います。
ましてや直属の部下としても一緒に働いたし、なかなか濃ゆい関係ですね~(笑)




> JUNさん

えーーーっと(汗)
写真の未沙は小学校入学前、つまりは幼稚園児くらいなので、
ライバーは小学生くらいだと思われます(大汗)
未沙パパとグローバル氏は家族ぐるみでお付き合いがあったと
「白い追憶」にありましたので、
三人で一緒に撮った写真の一枚くらいあるはずということで。

そして、JUNさん風に楽しんでいただけてよかったです~(*^^*)



プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

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ご活用ください♪

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