SS <song for you> 10 (完)

近日中と先回書きましたが、本当は連日UPにしたかった!
やっぱりできなかったけど、7月中に終わらせられた~\(^o^)/
ちょっと浮かれ気分です。


楽しんでいただければ、うれしいです。




* 戴いた拍手コメントにお返事しました。(7/31)(8/3)(8/9)(8/16)(8/20)(’15/2/27)





<10>






各々が談笑している会場に、ミンメイはそっと入る。
目の早いキムが、短く声をあげると、一斉に視線が集まった。
「直接おめでとうが言いたくなって、やっぱり来ちゃった」
ミンメイは輝に向けて、舌を出す。
そこへカイフンがアコースティックギターをもって登場し、一瞬空気が止まったが、
彼は軽く会釈をし、準備されていた椅子に腰かける。
緊張がゆるんだところで、ミンメイはマイクを持ち、改めて祝福の言葉を述べた。
「マクロスの進宙式で初めて輝と出会ったのは、未沙さんも私も同じですね。
あれからほんの三年くらいしか経ってませんが、
すべてが変ってしまいましたが、
全部壊れてしまったと思っていたなかから、芽生えた絆はあります」
ミンメイはコミリアに視線をあわせる。
コミリアはマックスの手を離れ、ミンメイに近寄り、二人は手を伸ばして握手をした。
「これからもたくさん結ばれ続ける、多くの絆のために。
宇宙に命を運ぶ船の艦長さんになる未沙さんと、
たくさんの命を護る輝に、この曲を」

カイフンはイントロを奏でた。
しなやかな指は弦を弾き、紡がれた音とミンメイの声が重なる。
参列者はこの曲を何度も、いろんな人が歌うのを耳にしているのに、
初めて聞くかのような新鮮さがあった。
言葉が胸にせまり、抱いた想いは形になる。
そこにいた誰もが、愛された記憶を、愛してくれたひとを、
そして、愛するひとを思い浮かべる。

未沙の手が入っている詞だと知っても、ミンメイはこの曲に惹かれた。
自分の歌にするまでにかかった時間も葛藤も、
今までミンメイが経験したものよりずっと大きかった。
あなたがいるから。
それは未沙が輝に宛てて囁いているようで、刃のように胸を貫く。
何度も言葉に詰まり、涙を流しても、
それでも歌いたいと思う気持ちを捨てられない。
歌い手のオーディションも、本当はどうでもいい。
ただ、彼らが愛を誓ったこの日に、この歌を贈りたかった。
叔父夫婦に、カイフンに、そして音楽と仲間たちに支えられ、
立ちあがった姿をおぼえていてほしかった。

『君には歌があるじゃないか』

誰よりも自分を理解してくれていた、輝へ。



未沙の心はひそかに揺れている。
さきほど皆の前で愛を誓い合ったのに、どうしてこんなに心が騒ぐのだろう?
傍らに立つ、彼の指先にそっと触れた。
気付いた輝は、未沙の手を握る。
それだけで不思議なほど簡単に、胸のざわつきは静まった。
ミンメイは歌う。
遠い祖先の暮らしと、自分達を重ね合わせて訳した言葉たちは、
優しい旋律に乗って未沙の心にも届く。
ミンメイののびやかな声には、明るい力が宿っていて、
彼女が歌を取り戻したことを未沙は感じ取った。
I love you so.
自然と顔を合わせ、輝と微笑みあう。
そんなふたりをみつめるミンメイも微笑む。



歌い終えたミンメイは、ゆっくりと頭を下げた。
グローバルが手を打つ。
それを合図に、割れんばかりの拍手がホールに満ちる。
ミンメイは笑顔で顔をあげた。
そして波が引くように静けさが帰ってくる。
「未沙さん。
あなたの歌を、私、ちゃんと歌えてましたか?」
まっすぐに未沙を見つめ、彼女は問う。
ふたりは輝を介してではなく、己の瞳に相手を映す。
未沙はプライベートでミンメイと接する時間は少なかったが、
なにかを振り切ったすがすがしさが感じられた。
未沙は素直に伝える。
「私のじゃないわ。
あなたの歌よ、ミンメイさん」




「ねえ、あなたの歌ってどういう意味なの?」
「そんなこと私が知るわけないでしょ!」
式も終わる時間が近づいた。
最後に未婚女性だけが集まり、列を作った。
最前列を陣取ったキム、ヴァネッサ、シャミーはくっついて囁きあう。
「ほらほら、おしゃべりしてると逃すわよ」
クローディアはヴァネッサの後ろに、ミンメイもその隣に並んだ。
「で、ほんとのところ、どういう意味?」
クローディアがミンメイに問う。ほかの三人も一斉に顔を向けた。
ミンメイは短い声をあげる。
居並ぶ女子全員が目の色を変えて正面を向いた。
「ちょっとぉ!紛らわしいこと、なしよっ!!」
シャミーがミンメイを振り返り、口をとがらせる。
ヴァネッサとクローディアもそちらに気を取られた瞬間に、
ブーケは未沙の手を離れ、宙に弧を描いたが、予想より飛距離がなく、
偶然、ひとりだけ前を向いていたキムが一歩踏み出して、受けとめた。






それから数か月後。



「新居に飾ってって言われたからね」
輝は式の当日、ニッチに飾られていたフォトフレームを荷物の中から探し出して、
ソファの未沙の傍らに座る。

メガロードが飛び立ち、落ち着くまであわただしい日々が続いた。
けして些細とはいえないケンカもあったし、
順風満帆とは胸を張って言えないことも多々あった。
そして家に帰ってきても、着替えて眠るだけという毎日で、
今日はようやくふたりでくつろぐ時間が取れた。

輝が電源を入れると、浮かび上がるのは、
スタンドカラーの白いマーメードラインのドレスの未沙と、軍の礼服の輝。
クローディアが未沙に内緒で、写真の前撮りとドレスを手配していた。
礼服につける勲章がひとつ足りなくて、ひと騒ぎ起こしたのもいい思い出だ。

「未沙にあやまらなきゃ」
神妙な輝の言葉に、彼女は首をかしげる。
「俺さ・・・・きみの・・・」
歯切れが悪く、うつむきがちな輝の様子に、未沙は不安になる。
「きみの夢、かなえてあげられなかった」
「そんなことないわよ!」
間髪入れずに未沙は声をあげるが、輝はうつむいたままだ。
「・・・俺、どんなにがんばってもさ。
きみの・・・・・おとうさまにはなれないよ」
にやりとしながら、輝は顔をあげた。
とっさのことで未沙は呆然とし、輝は声をあげて笑いだす。
「おとうさまのおよめさんに、なりたかったんだろ?」
幼い日、周りの大人に問われるがまま応えていたことを、
それを知るはずない輝の口から告げられて、一瞬驚いたが、未沙も吹き出す。
「やだっ、総司令でしょう!!」
「あったりーっ」

テーブルの上に置かれたフォトフレームは、次々と画面が変わる。
式の当日の写真も追加されて、懐かしい笑顔も映し出される。
輝が再びフォトフレームを手に取ると、未沙も並んでのぞき込む。
「まだそんなに経ってないのに、ずいぶん前のことみたいだ」
「もう太陽系も出てしまったし、みんな遠くなっちゃったわね」
未沙はさみしそうにフレームのふちをなでる。

「ね、今の未沙の夢はなに?」
「さあ、なにかしらねえ・・・?」
含みをもった笑みを浮かべ、未沙は輝を見つめる。
「あなたは?」
俺?と問い返し、フレームをテーブルにもどすと、未沙を引き寄せた。
「けんかしないですごすこと」
彼の腕の中で、未沙は笑う。
「それはなかなか難しそうね」
「簡単にかなわないからいいのさ。で、なに?」
「叶ったら教えるわ」
不服そうな輝の唇を左の薬指でなぞって、ゆっくりと瞼を閉じた。








Fin











☆ この話を書くにあたって、
『アニメージュ ’83年8月号』の『マクロスタイムス』
『美樹本晴彦セルワークス』・・・ウエディングドレス二着・スーツ
『早瀬未沙 白い追憶』
を参考にしました。

『マクロスタイムス』に、ミンメイ・カイフンが登場していて、
それをどうするのか、大変悩んだのもいい思い出になりました(笑)
なお、勲章の件はここでは触れてませんが、ミンメイにあげちゃったチタニウム勲章です。
どんな騒ぎか、ご想像にお任せしますね(^^ゞ




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No title

>ぱよぷーさん

こちらこそありがとうございます。
楽しんでいただけてうれしいでーすヽ(^。^)ノ

私こそぱよぷーさんの多彩さにいつも感動していますよ~!
足元にも及びませんわ~(大汗)
新作なぞいつになるかわかりませんが
細々と続けていけたらなあと思います。

> JUNさん
いえいえ、私の力不足ですみません。

映画でも悩むけど(はっきり拒否したけど)、
悩みつくす時間はなかっただろうから、
ここではじっくりと取り組んでもらいまして・・・
あの歌詞は読めば読むほどミンメイには辛い部分が多いなあ、
と思いながら書きました。

次回作・・・うははっ(大汗)
未沙の夢ではないことだけははっきりしておりまーす。
少々お待たせしそうですが、よろしくお願いします♪

> ゆばさん

ありがとうございまーす♪
楽しんでいただけて、私もうれしいです~(*^^*)

「愛おぼ」ではフラれた直後にあの歌。
ミンメイって強靭!
死にたくないから歌えたのか、とか、いろいろ思いながらも、
TVのミンメイにも歌ってほしいな~、と、あのような形になりました。
ちなみに代わりになるような曲はないかと、TVのミンメイの持ち歌で、
結婚式に歌えそうなのを探してみましたが・・・
0-G LOVEならセーフ?
愛は流れるなんて、絶対無理だよね(汗)

昔の話は忘れない年寄りのように、
中学生の時の記憶が残っていたので、
そっちはばっちしだったのですよ(*^^)v
手放した本もヤフオクとか、アマゾンとか、
再入手できたので、ほんとに助かった。(確認できたし!)
21世紀、ネット社会ばんざーい!

私、ボケたら絶対マクロスの話してると思うので、
今回集めた本類はすべて取っておくことにします!!!

松浦は「マクタイ」に出ていない人物(当然なんですが)なので、
最後の最後まで迷いましたが、土壇場で外しました。
またひょっこり出てきますので、かわいがってくださいね。

次回までお時間いただきますが、
またよろしくおねがいしまーす。

> VF-4さん


いいですね~っ!
山の中というと、軽井沢とかですかっ!?
プリントゴッコもなつかしい~(*´з`)
今はインクとか、消耗品なくなっちゃって、使えなくなったのが悲しいです。

カイフン、イメージ変りましたか!?
楽しんでいただけて、なによりです♪
しかし、さすがに結婚式にGパンはまずいと思いますよ~(笑)

礼装のひと悶着は、どこかで書けたらいいなあ、と思います。
勲章出すような団体は、礼装に絶対つけますよね!!
で、一個足りない・・・ははは
おまわりさんとか、自衛隊さんとか、そういう写真があると聞いていたので、
これはぜひ!と思っていたのですが、はたと気づいた。
二人そろって軍人の場合、両方とも礼装だったのでしょうかね~?
書き終わってしまったので、あとのまつりなんですが。

次回更新まで時間かかっていますが、また遊びに来てくださいね。

> VF-4さん

ケンカできるということは、
言いたいことが言い合える関係ですよね~。
年上で上官な奥さんでも対等にやってけるのが、
輝の器のデカいところだと思います。
メガロード内での生活も書けたらいいのですが、
次の話はそこまでいかないです。
なにもかもがのんびりですみません~(汗)

「愛は流れる」も何度見てもいいですよね!
この世界の「分岐点」なので、
力の入れ方が違うなあ、と思います。
そしてここで終わらずに、その後のパッとしないというか、
人間臭いドラマが続いたおかげで、
30年の時を経て再燃したので、評判が悪い2部も大好きです。
ほんとに作画だけなんとかしてほしかったなあ・・・

No title

> びえりさん

一番ちゃっかりしてるのは誰か、考えた末の選択ですよ。

プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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