SS <trouble> 前編

『超時空要塞マクロス』は、1982年10月3日に放送が開始されました。

その日、私は年上のお友達の高校の文化祭に行きました。
アニメ部の見学に(笑)
その当時、私が好きなのは「ゴーショーグン」と「ゴットマーズ」、
アニメ雑誌で見かけた美樹本さんの絵柄は、どちらかというと苦手でした。
しかし、一緒に行った友人は当時ガンダムが凄い好きで、その流れで興味を持ち、
「絶対、間に合うように帰る!」と宣言し、実行。
ずるずると私もつられて、テレビの前に座ったのでした。
・・・今は彼女に感謝しています。
ちなみに彼女は9話で脱落しました(苦笑)
ミンメイが変っていくのに、耐えられなかったんだって~。
人生、いろんな出会いがあります(笑)

というわけで、3日にUPできたらいいな、とうっすら思っていましたが、
やはり間に合わず、10月最初の日曜日。
記念すべき日にUPできてうれしいです。
ふさわしいか、と言われれば、小首を傾げ続けてしまいますが(汗)

時期的には、オーディションのあと、そんなに日が経っていないころ。
まだまだ6月中の出来事です。
今回は前後編で。
後編も追ってUPします。
一度に出すには、長すぎました(涙)



楽しんでいただけたら、うれしいです。





*戴いたコメントにお返事しました。(10/23)




    trouble   <前編>







メガロードは、一か月の工期の遅れを、取り戻せないままでいた。
なんとか時間を稼ぐのに、有効な手立てが見つからない。
松浦も四方八方に様々な手立てを講じているが、今のところは手ごたえがない。
また、移民志願者も当初の予定に達しない。
そもそも『宇宙移民』と言われても、フォールドに巻き込まれて宇宙に吹き飛ばされ、
ようやく地球に帰ってきた人々にとっては、関心は薄い。
未沙は、松浦からイメージ戦略で、
「愛おぼえていますか」をひっさげたリン・ミンメイを乗船させる案を提示されたが、
返事を保留している。
個人的に因縁の浅からぬ彼女に、自ら声をかけねばならぬのは、できるだけ避けたい。
しかし、ミンメイが乗るのであれば、時間を稼ぐ方法もあると、彼は言う。
大した代替え案もなく、こちらも早急に解決せねばならぬのに、腹が決まらない。
工事の遅れは、居住エリアである市街地部分だけなので、
火星までの試験航行にはなんら差しさわりもなく、
一旦作業員を降ろした後、当初の予定通り一週間後に決行される。


                    ☆


マクロスシティは、梅雨に似た天気が続いていた。
薄く日が差し込むこともあるが、重たい雲は居座り、
傘がいるのか否か、思案しながら人々は空を見上げる。
ミンメイも例外ではなく、ひとりで暮らすマンションの窓から、空のご機嫌をうかがう。

ミンメイは迷っていた。
アイドルから脱皮し、この先、どのように音楽とかかわっていくのか。
多くの人に、自分の歌を聴いてほしいと思う気持ちには、変わりはない。
大きなチャンスを手にし、これからの方向性を打ち出していくのだが、
周りの意見と自分の思いが合致しない。
緑化計画が進み、各地の都市が活気づいている今、
世界縦断ツアーを提案するものもいれば、
地盤を固める意味で、マクロスシティでメディアを中心に活動し、
「愛おぼえていますか」を前面に打ち出していくのはどうか、と言うものもいる。
ミンメイとしては、以前やった道をたどるようで、その両方とも気が進まない。
今までと違う、新しいなにか。
考えただけで心が躍るような、新鮮ななにかを。
答えはすぐそこにありそうなのだが、明確な輪郭が感じられず、
言葉を探しているが、早急に結論を求められている。

窓ガラス越しに、街の中心にあるマクロスを見つめながら、
ふと、自分のくちびるに触れ、もうひとつの迷いに行きあたる。

彼はいつも、都合が悪くなると、強引に唇を奪う。
それ以上何も言うなと、口止めをするように。
演技もする仕事柄、キスシーンは何度か経験したが、
離れた瞬間に胸が痛くなるのは、彼だけだ。
それは、双方の通い合った愛情から交わされた行為でないとわかっているので、
認めることが苦しい。

紗のカーテンをひき、バックを持つ。
折り畳みの傘を準備しようとした瞬間、ケータイが鳴り、
応対しながら彼女は部屋のドアを閉めた。


                  ☆


今日は降りそうね。
未沙は宿舎のドアを開け、空を見上げると、赤い傘を手にした。

あの日刺さった棘は、痛みを伴い、存在感を強くしていく。
無断で自分の肩書を利用されたことへの憤りも、強くあった。
あのとき松浦を探していた理由も、輝は口ごもるばかりで、
肝心なことは要領を得ない。
僕らに関わりのないことだし、他の人に頼まれただけだから、信じてほしい、と真摯に訴え、
悪気はなくとも未沙を利用したことに対しては、
心から謝ってくれたのだが、はい、そうですか、と引き下がれる心境には、
まったくなれなかった。
その辺で水に流さなければ、と、頭では思っていた。
しかし、釈然としないことばかりで、湧き出る負の感情はとまらない。
控室の並ぶ廊下で彼を見かけたことを、軽く、あっさりと訊ねるつもりだったが、
言葉は硬くとがり、詰問調になってしまった。
始めはやわらかく対応していた輝も、最後はだんまりを決め込み、
それ以降、ぎこちない空気が、二人の間に漂っている。

出勤するための、迎えのジープの後部座席に揺られながら、
未沙は左手を広げ、薬指のリングを見つめる。
夫婦の間で、隠し事なんて。
自分の知らないところで、彼も係る何かが起こっているのだけど、
教えてもらえない口惜しさが、未沙の心を重く染め上げていく。
そこには、ミンメイもいるはずだ。
彼女とのことを持ち出せば、自分がみじめになると知りつつも、止められず、
輝は『トモダチ以上の感情はない』と言い切るが、信じきれない。
皆の前で誓った言葉も、ふたりで交わしたサインも、すべてが揺らいでいく。
男女間でトモダチなんて・・・
広がり始めた憂鬱な気分を振り払うように、未沙は頭を振った。

自分の父母の間には、こんなことはなかったのだろうと思うと、
己のふがいなさや未熟さが引き起こしたのではないかと感じてしまい、
気持ちは滅入る。

マクロスシティ攻防戦のあと、二人で彼女を見送った日。
そして結婚式で彼女から祝福を受けたとき。
けじめはついたと思っていた。
だから彼女の存在が、自分を再び追い詰めるとは思わなかった。
『結婚しても油断しちゃ、ダメよ』
クローディアが、冗談半分で言った言葉をかみしめる。


                   ☆


スタジオのピアノの鍵盤を、意味もなく押していく。
耳障りな音は、鳴り続ける。
規則性のない、気まぐれな音に同調するように、ミンメイは想いをめぐらす。
「松浦さんが好きなの?」
輝の声が蘇る。
しかしミンメイが知っている、好き、は、彼に当てはまらない気がしていた。
ちやほやされたアイドル時代、カイフンに守られながら回ったコンサート、
そしてひとりになり、改めて音楽と向き合っている現在。
ミンメイが過ごしてきた時間の中で巡りあった、誰にも彼は似ていない。
だから珍しいだけ、と心に言い聞かせる。

ピアノの音は、不快さを脱ぎ捨て、メロディを紡ぎだし始めた。
単音で奏でる主旋律から、次第に和音に。
鼻歌のように、自然と声が零れる。

それは初めての愛の旅立ちでした 
I love you so.

あのひとの歌詞。
レイの声。
そして、輝。
・・・みんな行っちゃうのね。
突然淋しさをおぼえる。その感触が、自分でも意外で驚く。
そのあと、ふわりと浮かび上がるのは、アウトラインは見えない、雰囲気だけの景色。
ミンメイのなかを、ふわふわと漂う。

文化を伝えましょう。
あのひとは言ったの。

私のやっていることは、文化なのかしら?
一年経ったら忘れ去られるような、流行歌しか歌わないのに。

大戦時、戦いを目の当たりにしながら、歌い続けた。
自分が成し遂げたと、今でも信じられないくらいの偉業で、
当然、その後にも影響を及ぼした。
そのとき自分が得たものは、自信だったのか、驕りだったのか、今となってはわからない。
反乱を起こしたゼントラ人に、
『知らなかったものを、いきなり目の前に突き出されたから戸惑っただけ』と言われ、
足元が大きく揺らいでしまった。

人々の娯楽以上のなにかが、歌の中に本当にあるのだとしたら。
あったとしても、自分にそれを表現できる力があるのか。

タンッ、と両手で鍵盤を叩く。
そして、深く息を吸い込むと、ピアノを弾きながら歌いあげた。


                  ☆


珍しく、店が開いてる時間に、仕事のキリがついた。
久しぶりに夕飯の支度もできそうで、買い物がしたい。
食材もだが、なによりも、新しい夏服がほしかった。
この先数か月、仕事に追われることはわかっているのだが、
地球で過ごす夏はしばらくないから、少しでも楽しみたい。
未沙は、機嫌よく挨拶を残して、ロッカールームへ向かった。

あいにくと外は土砂降りで、雲が立ち込めた空の先では、稲光が走る。
傘が役に立つのか、不安になるほどの降りだが、
今度はいつ時間ができるかわからないので、未沙は踏み出した。
赤い傘にはじかれる雨音は、耳障りなほど大きかったが、濡れないように歩く。
ファッションビルの並ぶ区画は、いつもより人がまばらだが、
人っ子一人いないわけでもなく、傘がない若い男が、未沙の脇を駆け抜けていった。
軽く振り返りながら、今朝の玄関に、もう一本傘があったことを思い出す。
降り方の様子を見て、迎えに行ってみようかと考えながら、目的のビルについた。

エレベーターのドアが開く。
未沙のほかに人はいないので、閉めようとボタンに手をかけると、
誰かが駆けてくる気配がした。
いつもの習慣で、開くボタンを押す。しっとりと髪を濡らした若い女が乗り込んだ。
「ありがとうございます」
声を聞いて未沙は驚く。
濡れている女も気配を感じ、顔をあげて、声をあげる。
「・・・ミンメイさん」
「はやせ、さん」
ぎこちなく二人は笑顔を作った。








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> VF-4さん

VF-4さんのストライクゾーンに入ってましたか!?
だとしたら、うれしいです~♪
まだまだ鬱々とした展開だったので。
プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

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SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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