SS <love and hate> 2

一月も終わりの週になっているのに、
トップがまだまだ「おめでとうございます」で、気持ちだけが空回りな日々でした。

とりあえずUPです。
今回はミンメイ視点、「flowers」のころから始まります。

楽しんでいただければ、うれしいです。


*戴いたコメントにお返事しました。(1/29)













  <2>






真夜中を過ぎ、街のあかりも落ちて、ビルのてっぺんに航空障害灯が点滅する。
マクロスのあたりは滑走路もあるせいか、明るくなっていた。
ミンメイは紗のカーテンを開け、ぼんやりと眺める。

髪を切った自分を見せたかった。
そして未沙との時間を、聞いてほしかった。
『早瀬さんがね、私の歌を文化だって、言ってくれたの』
ふーん、でも、へぇ、でも、なんでもよかった。
彼の反応が欲しかった。

ヒトにはみな、事情がある。
踏み込まれたくない、思い出したくない、言葉にしたくない。
三年前には想像もできなかったことが起こってしまった今、
なくした大切なものを悼み続けるひとは少なくない。
松浦もそのひとりであることは、時折見せる表情などから、ミンメイにもわかっていた。
今日ほど、彼から色濃く『誰か』を感じたことはなく、
自分を拒んだ背中に触れずにはいられなかった。
私が、ここにいるわ。
気持ちを残すつもりで、頬を寄せた。
自分の気持ちが松浦に届いたのか、
考え始めると辛くなり、ミンメイはちいさく頭を振った。
短くなった髪は、いままでより軽やかに揺れる。
ガラスに映る自分が淋しそうに見えて、無理矢理笑顔を作った。

翌朝、メールが二件届いていた。
最初に開いたのは未沙からで、髪を切ったことよりも、
ミンメイと仲良くなったことを輝が凄く驚いていたと綴られていた。
ふたりの様子を思い浮かべると、自然に笑みが零れる。
未沙が、どんなふうに自分のことを輝に伝えたのか気になったが、
それは次に会ったときに聞こうと決めた。

二件目は、事務所のマネージャー。
今日の予定が変わりました、とタイトルが打たれ、
本文には具体的なタイムテーブルと、場所が記されていた。

マンションのエントランスに迎えに来た、
事務所のシルバーのワンボックスカーにミンメイは乗り込む。
マネージャーだけでなく、社長とギタリストとベーシストがすでに乗り込んでいた。
「普通だったらこっちに来てもらうんだけど、ちょっと無理なんだよね」
社長は半笑いを浮かべた。
「じゃあ、これから・・・」
「そう。
新しい勤め先の工場に向かうんだけど、1時間半くらいかかるんだ」

社長だ、マネージャーだといっても、もともとは音楽を愛する者同士、
顔を合わせれば、話も陽気に盛り上がる。
ミンメイは、適当に皆にあわせていたが、いつものように積極的には加わらなかった。
「どうしたの?具合、悪い?」
少し沈んだ様子が気になったのか、マネージャーが覗きこむ。
「なんでもないわ。
あの曲の歌詞、もっといいのがありそうで、でも浮かんでこなくて、って、そんなかんじ」
「今のままでも充分いい出来だと思うのだけど、まだ直すの?」
「もっともっと、いいフレーズが見つかりそうなの」
ミンメイの言葉に、彼女は目を細める。
「ようやくプロらしくなってきたわ」
「あら!私は16からずっとプロよ」
「よく言うわ、行き詰って男んとこ、逃げたくせに」
「やーだぁ。それ言っちゃう?まいっちゃうなぁ」
ミンメイは大袈裟に声をあげながら、笑う。

社長とはデビューの時からのつきあいだが、
マネージャーはその社長が、ミンメイの再出発の際に連れてきた。
いつも黒か紺のシンプルなスーツ、金色の長い髪を小さくまとめ、
フレームとレンズの細い眼鏡で碧い瞳を覆う。
元々はバンドで歌っていたという。
アイドル時代のミンメイのことを、よくは思っていなかったと、
飲んだ席でぶっちゃけられ、浮かべた笑顔がその場で凍りついたこともあったし、
曲に対しての指摘も手厳しく、ミンメイは少しだけ苦手だった。
「あの曲、好きよ」
「私の曲は嫌いなんでしょ」
ミンメイはいたずらっぽく応える。
「シナ作って、きゅーんきゅーんってのが、嫌なのよ。
今回のは違う。なんてのかな、魂が入ってるって言うか・・・」
「でたー!魂!!魂の叫びだぁぁぁ」
男たちが茶々を入れる。
「うるさいなー、私はミンメイと話してるのよっ!
女同士の話に、口をはさむなー!!」
笑い声が弾けた。

莫迦話に飽きてきたころ、誰かが軍の話題に触れた。
「メガロードの話、おいしいんだけどねぇ・・・」
社長が切り出すが、ミンメイは窓の外に視線を移した。
「宇宙から新曲が届く、って、良くないか?」
「発想が軽薄ですよ」
「そういうノリが大事なんじゃない?」
「ミンメイはどう考えてるの?」
マネージャーにふられて、ゆっくりと車内に視線を戻すと、
仲間たちは興味津々で答えを待った。
「どうしようかしらねえ」
「って、のんきなこと、言ってられないのよ。
急いでるようだから、すぐに他に取られちゃうわ」
「声をかけられたのが、なんで私なんだろう、って」
「『愛おぼえていますか』の公式歌手じゃん」
ベーシストが応える。
「そんな特典、どこにも書いてなかったわよ」
「だから、売り込んだんだよ。
レイの方もそういう企画を抱えてたから、いい時期だったなあ」
社長のひとことで、ふたたび鋭い痛みが、ミンメイの胸を走る。
なにもかも最初から仕組まれていて、
彼は、自分を駒のひとつとしか見ていないのかもしれない。
『自分』が商品であるミンメイには、ごくあたりまえのことなのに、
今回だけは巧く呑み込めない。
ビジネスなの、何度も自分に言い聞かせる。
「俺、最初レイに会ったとき、バイトの面接かと思った」
「俺もそう思った!
あんなチャラい軍人もアリなんて、すげえ世の中になったもんだなあ。
しかも偉いんだろ?」
社長はうなずく。
「メガロードの副艦長様だと」
マネージャーがミンメイの耳元で訊ねる。
「だから、嫌なの?」
ミンメイは目を見張る。
返事を待たずにほかの声が被さった。
「新聞で見たけどさ、たしか艦長は女性で・・・っ」
ギタリストは何かを思い出し、不自然に言葉を切った。

車内は静まり返る。
ミンメイは薄く笑みながら言った。
「私のお友達よ、未沙さん。輝の奥さんなの」

市街地を出て、荒野を走る一本道はガタガタと揺れる。
低いエンジン音しか聞こえない。

ミンメイが沈黙を破る。
「未沙さんと輝が乗っているからとか、そういう理由じゃないわ。
なんども繰り返すけど、どうして私なのかな、って。
歌が文化なら、他にも歌手はいるわ。
戦いしか知らなくて、歌が珍しかったのだったら、そのひとたちでもいいわけでしょう?
それに移民艦のなかからも、新しい誰かが出てくる。
私がメガロードに乗る必要って、なんなのかしら?」
「・・・地球にいたって、世界ツアーとか、前と変わらない活動だぞ」
社長は振り向かずに応える。
「誰でもいいんなら、君でもいいんじゃないの?ミンメイ」
「いや。君がいいんだよ、ミンメイ」
「私が乗るって決めたら、みんなも乗ることになるのよ?」
「いいんじゃないの?
俺も家族はいないし、今の地球じゃ、マクロスの中の方が住み心地よかったなあ、
って思うときあるもんな」
「私が飽きられて、売れなくなっちゃったら?」
「そうならないように、私たちがいるんでしょ?
それに、今のあなたなら、面白いことをどんどん起こしていける予感がするわ」
マネージャーはミンメイに手をかさねる。
「きゅーんきゅーんだけじゃないもの」
ありがとう、とミンメイは応えた。
「ごめんなさい。でも、もうちょっと考えたい。
腑に落ちない、っていうか、すっきりとしないの」
彼女の意を汲んで、皆は静かにうなずいた。

静まった車内も、ふたたび会話が始まるが、ミンメイは加わらずに軽く目を閉じる。
胸の痛みをなぞるように、意識を向ける。











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No title

> ぱよぷーさん

ほんとにお待たせしました~(汗)
うれしいことばを、ありがとうございます♪

間が空きすぎちゃって、間延び状態でなんとかしたいーっ(+_+)

あと一息、がんばっていきますね。


プロフィール

vt-102

Author:vt-102
ぶい、と申します。
30年前、夢中になった
『超時空要塞マクロス』
WOWOWの放送を見て、
当時の思いが蘇って大変中。

戴いたコメントは、すべて非表示にしています。

SSの目次を「SS menu」としてリンクに張り付けました。
ご活用ください♪

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